2016年7月12日火曜日

登山ログ

 残しておかないと、徐々に忘れちゃうよねということで、登山ログをつけておく.

2015年
8/21-23 三俣蓮華岳界隈(鷲羽岳、水晶岳、雲ノ平、黒部源流)
9/19-20 赤石岳(テント泊)
日程不明 大光山、愛鷹山など

2016年
6/11-12 鳳凰三山(テント泊)
7/02-03 甲斐駒ヶ岳(テント泊)
7/14 八ヶ岳(赤岳)(日帰り)
7/21-23 立山、剱岳(テント泊)
8/06-07 北岳、間ノ岳(小屋泊)
9月 槍ヶ岳、西穂高岳?

 振り返ってみると、月に2回ほどの山行なので、それほど多くは登っていないことがわかる.2016年は本格的にテント泊を始めている.テント泊は、テン場まで荷物を背負うことは大変ではあるけれど、だいたい山頂手前にテン場があるので、テント立てて荷物を置いておけば、身軽に山頂へ至れるため、それほど辛くはない.また、テント内はプライベートスペースなので、その中でシュラフの中に潜り込むのは最高だし、小屋に劣らない良さがある.

 今年も登れる限り、登りたい.

2016年6月30日木曜日

純粋.

 話の内容と全く別のところでのつっこみになるが・・・

 「週刊現代の三流記事を信じると、最悪死亡する場合もあります!!」(参照

 こんなタイトルのブログ記事を見かけた.内容は,どうでもいいんだけど・・・最後の方にある一言を興味深く読んだ.

例えば早期癌1つとっても、多くの早期癌は癌の目を出すまでに、10年ほどかかると言われています。
癌治療されて文句を言う人もいますが、果たして癌になる10年の間に自分の健康と真剣に向き合ってきたのでしょうか?。
自分を反省しないで、医療ばかりを批判する事ってどうなのでしょうか?。

「健康的な生活を送る」ことが,果たして「10年後のがん罹患」にどれほど寄与するのか,かなり疑問ではある.もうそんなことを純粋に信じられなくなった自分がいた.

2016年6月17日金曜日

村中璃子という人について

 Wedgeという雑誌でいろいろお書きになっている様です.
 恐らく自覚がないのだと思うし,臨床経験もなさそうなので患者とのコミュニケーションとかも念頭にないんだろうけど,ああいうワイドショー的記事を発信し続け,反ワクチン派を叩き続けることって,ワクチンに心配を抱く人たちの懸念をさらに深めるんですよね.

 様々な問題に対して,場当たり的,あるいは「これが正しい」というアプローチのみで話されるのではなく,患者側がどうしてワクチン不信に陥るのか,それをどう克服するかというアプローチが必要だと思う.この人には,自分の中の答えのみが正しい,っていうアイデアしかなさそうです.

 こうやって,ワクチンを推奨したい側と,ワクチンを信じられない患者との亀裂が深まっていくのは,困った話だなと思います.

2016年5月4日水曜日

GARMIN fēnix 3J HR を購入した

 自分はすでに GPS ウォッチの Suunto Ambit 3 Run HR を持っていた.これを購入したのは3年くらい前だったと思うが、その時の購入基準として、最低限のデザイン性と、心拍数計測ができることがあった.当時、ランニングを始めて2年くらいで、基本的には Nike の iPhone アプリでペース計測などを行っていた.当時、心拍数の計測がトレーニングに役立つらしいということは聞いていたのだけれど、それ以上は大した知識もなく、なんとなくの物欲で GPS ウォッチを買うに至ったのだったように思う.大手で GPS ウォッチを出しているところは、 Suunto, GARMIN, EPSON あたりだったか.まだ Apple Watch は発売していなかったし、してたとしてもスポーツ向けではなかっただろう.完全にネット情報を頼りに選んだが、 GARMIN は有名っぽかったがデザイン性が酷いなと思った記憶がある. ForeAthlete® シリーズだったと思うが、ぺらぺらな感じが受け付けなかったな(スポーツするにはいいんだろうけど).それで、Suunto Ambit 3 の方がいいかなと思って、心拍ベルトつきのやつを購入した.心拍測定の原理は不明なのだけど、おそらく心電図と同じ原理で R-R 間隔を拾ってるようだ.GPS としても、心拍計としても問題無く、登山もやるので登山ルートの保存もできて大変楽しめる時計だった.安静時と運動時の心拍から、 VO2max を計算できるのも面白かった.ただ、どうも解像度が低めで表示がガタガタであったのと、GPS を使用するとバッテリの持ちが厳しいこと (公式では 15 時間 参照)が欠点といえば欠点だった.まあ、解像度については時計に求めるにしては若干酷とは思うし、必要十分を満たしてはいたと思う.バッテリについては、実は今回購入した fenix 3J HR もほぼ同等の約 16 時間(GPS モード、公式 参照)なのだけど、Suunto はモバイルバッテリでどういうわけか充電できなくて、山小屋とか電源の無いところで追加の充電がどうしてもできないのがネックだった(登りで使えても、帰りで電池切れになる).

 ともかく、今回の GARMIN の時計の売りは何と言っても「手首で心拍計測」機能でしょう.先に言っておくが、胸ベルトも全く問題は無いし、若干不快ではあってもつけてれば慣れるし、精度も問題無いし、電池交換もできるし、そもそもライフログなんてつけたって何のアウトカムにも繋がらなそう(一部の人には安静時心拍を監視したり、「スマートウォッチで痩せました!」みたいな雑誌の裏みたいなことを信奉している人もいるらしいが)だし、そんなにすごいモノじゃあないんだけれど、それでもいろんなデータが可視化されること自体が面白くて、ついつい確認してしまう時計である.高いオモチャである.

 とりあえず、走ったりしてみたが、GPS としての精度は Suunto より高いように見える(道路を横断したレベルまで補足して確認できる)し、高度計なんかも付いているので面白いし(前の Suunto のやつは、Ambit 3 Peak にすれば高度計つきみたいですが、自分は Run を購入したので高度計はなかった)、ベルト不要で心拍計測できるのは便利だし、Suunto より圧倒的に高精細画面だしで、所有欲は満たされるいいモノである.
 なお、心拍計は、いわゆる医療分野のパルスオキシメーターの原理と同じっぽい.となると、医療者はよくわかっているのだが、この方法による脈波の読み取りは、振動のノイズをかなり拾ってしまうわけだが、そのあたりはどうなっているんだろうか.実際走ってみたところでは、おそらく運動負荷にパラレルに脈拍数が上がっていることはわかるのだが、正確性についてはあまり検証できていない.おそらく使用には耐えるのだろうと思う(正確性は不十分かもしれない).
 それから、iOS アプリの GARMIN Connect を導入しておいて、 Bluetooth でペアリングしておけば、アプリの側を起動すれば勝手に同期をしてくれ、ワークアウトの内容を保存してくれるので、ネット環境がなくてもスマホがあればいいというのも便利ではある.必須の機能ではないが.

 ちなみに、充電問題に関しては、手元の ANKER のモバイルバッテリで問題なく充電できることを確認した.

 なお、 Amazon で購入すると8万ちょい.安くはないですね.米国では $ 599 らしいので、だいぶ高めの設定になっていることがわかる.

2016年4月29日金曜日

走る際の膝の痛みについて

 結論は、原理は不明だが、ザムストのJKバンドを利用すると症状が緩和される.根本的には大腿四頭筋群の筋トレが必要.バンドは効きますよ.


2016年4月17日日曜日

efficacy と effectiveness の違いについて

 時々見かけて,これら二つは結構意味が違うんだよな~と思うんだけど,他人に説明できるほどよくわかっていないなと思ったので,再度まとめてみようと思う.

 医学研究や,政策的な文脈で,efficacy と effectiveness の違いというのは意識された方が良いです.以下に,意味の違いを簡単にまとめます.

 まずは,辞書的にはどうなっているか.(参考 リーダーズ英和辞典)
efficacy 効力,効験,効きめ
effective ①効力のある,有効な;有力な,有能な;効果的な;強い印象を与える ②実際の,事実上の;<兵員などが>応戦体制にある
英英辞書では,こんな感じ.(参考 Oxford Dictionaries)
efficacy The ability to produce a desired or intended result
effectiveness The degree to which something is successful in producing a desired result; success

 どうも区別は難しい.日本語のネット検索ではあまり正確な話が載っていないので,英語から引いてみると以下のような参考資料が無料で確認できた.

Technical Reviews, No. 12.
Gartlehner G, Hansen RA, Nissman D, et al.
Rockville (MD): Agency for Healthcare Research and Quality (US); 2006 Apr.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK44024/

 それほど長くない適度な感じだけど,面倒なのでイントロダクションのところだけ.

 Clinicians and policymakers often distinguish between the efficacy and the effectiveness of an intervention. Efficacy trials (explanatory trials) determine whether an intervention produces the expected result under ideal circumstances. Effectiveness trials (pragmatic trials) measure the degree of beneficial effect under “real world” clinical settings. Hence, hypotheses and study designs of an effectiveness trial are formulated based on conditions of routine clinical practice and on outcomes essential for clinical decisions.

 介入のエフィカシーとエフェクティブネスを区別する.エフィカシー研究(説明的なトライアル)ではその介入が理想的な環境下で期待する結果が得られるかどうかを調べるものである.エフェクティブネス研究(プラグマティックなトライアル)では「実際の世界」での有益な効果の度合いを測定するものである.ゆえに,エフェクティブネス研究における仮説や研究デザインは,ルーチンの臨床プラクティスや臨床判断にとって不可欠なアウトカムに基づき生成される.

 つまりエフィカシーとエフェクティブネスの違いは,端的に言うと「理想環境での効果か,実際社会での効果か」の違いということになるでしょう.よく臨床スコアの研究なんかが発表されることがあるが,だいたいはまず,大学病院や基幹施設で,手技等の十分な指導を受けてから実施して,「これだけ予後が改善しました!」「これだけ検査が減らせました!」という結果を発表している.これはある意味,「理想環境」であって,それを広く一般市中病院に適応できるか(一般化できるか)については不明である.一般的な環境で調査をして明らかになるのがエフェクティブネスなのでしょう.

2016年4月16日土曜日

福島の甲状腺がんの動向についての話

 昨年の津田先生の論文は、非常に大きな物議を醸した点で有益であったと思うし、県・国が集めたデータをまともに集計・解析して、英語で世界に発信した点で重要だったと思う.データがあっても解析しない・国内のみにとどめておくということをしているのはよくないのでね.
 こうやって公にしたからこそいろんな批判・議論できる.主だった批判をメモ的にまとめておこう. 


  • 福島甲状腺がん罹患率50倍に関するレビュー(試論) - ビーストの日記(参照
  • Epidemiology誌の津田敏秀氏の甲状腺癌の論文について : EARLの医学ノート(参照
  • 「福島の甲状腺がん50倍」論文に専門家が騒がないわけ(上) : Global Energy Policy Research(参照

 だいたい批判の対象になっているのは、以下のようなものにまとめられるだろう.

  1. 甲状腺がんの潜伏期間が4年というのは妥当か.
  2. 「甲状腺がんが 30-50 倍」はスクリーニング効果ではないか.
  3. external comparison の対象として、「国がんの甲状腺がん罹患率」を用いているがそれは妥当か(発症とスクリーニングによる診断の違い).
  4. 甲状腺がん、特に乳頭がんは予後良好なのでスクリーニングすることが間違い.
 まず1. について.小児甲状腺がんを検討する際、教科書等に潜伏期間は明記されていないのが現状だけど、CDCでは以下のようなレビューを出して、甲状腺がんの潜伏期間について報告している("小児"甲状腺がんでないことに注意)(参照).
D. Thyroid Cancer
 For thyroid cancer, direct observations or estimates of latency for 9/11 agents (Latency Method 1) or other agents (Latency Method 3) are not available in the literature. Also, the Administrator was unable to find recommendations on minimum latency from other authoritative sources [Latency Method 2]. Therefore, the Administrator has decided to rely on estimates of minimum latency based on the statistical modeling of risk for associations between exposure to low-level ionizing radiation and thyroid cancer of 2.5 years [Latency Method 4B]. Therefore, based on the best available scientific evidence and following the methodology presented in this revised White Paper on Minimum Latency and Types or Categories of Cancer, the Administrator selected a minimum latency of 2.5 years for use in the evaluation of a case of thyroid cancer for certification in the WTC Health Program. For a cancer occurring in a person less than 20 years of age, see Section III,E.
 上記では、潜伏期間に関する直接的な報告がないため、統計的な推定による潜伏期間を計算し、最小の潜伏期間は 2.5 年としている.なお最後の方に「20 歳未満に関しては〜」というくだりがあるが、20 歳未満の小児がんについても後述してあるが甲状腺がんについての直接的な記述はない.
  潜伏期間が 4 年だというのは、確かに短すぎる印象を持つのは主観的には事実なのだけど、その「4 年」の比較対象がこの世に存在しなくて、CDC の推計は上のように発表されているので、その推計に対する批判をするのが合理的と思われる.この推計、どうやったのかよくわからないけれど.

 すなわち、「4 年であるという根拠もないんだが、4 年じゃないというのは一体何を根拠に言ってるの?」ということになる.剖検で 3 割以上に甲状腺がんがあったという報告があるらしいけど、小児の話ではないので無効でしょうから、意味のある批判になっていないと思う.

 2. について.これについても、比較がないのでどうしてそんなに批判できるのかよくわからないんだけど.韓国でのスクリーニングの報告(参照)は結構有名で、かつスクリーニングの意義を問う重要な報告でした.これを根拠に、スクリーニング効果を言っているに過ぎないのでは、という批判がある.また、韓国の報告ではスクリーニング対象がかなり低く(10% 台)、スクリーニングのカバー範囲が増えるとそれだけ、甲状腺がんと診断される率は上がるとのことで、福島のスクリーニングは 8 割前後のカバー範囲のため、韓国の報告(約 15 倍)よりはるかに高い 50 倍だって、スクリーニング効果の範囲内でしょうということ.

 これについてはその通りかなとも思う反面、わからないところもある.カバーが広がると incidence も上昇するということが観察されたらしいが、それがよくわからない.スクリーニング対象がほとんどランダム(つまり、甲状腺がんが多そうな人口を選んでいるわけではない)であれば、真の甲状腺がん罹患割合は不変のはずで、スクリーニング陽性割合も変化がないのじゃないかと思うんだけど、どうなんだろうか.

 あと、この文章って単なる(といっては失礼である.NEJM だから!)Perspective の一記事であるためか、年齢別のデータもないし、査読も入ってるのかよくわからないんだけど、それって議論の比較根拠としてどこまで有効なんでしょうかね.

 3. は当然ダメだと思うんだけどw このへんは津田先生もわかってやったんじゃないかと思う.というか、前述の韓国の例も、「15 倍」というのは、スクリーニング前 vs スクリーニング後なので、症状ありで検査して診断されたやつ vs 無症状でスクリーニングにより発見されたやつの比較になっています.そういう意味では同じ舞台で戦っているとも言えなくないな!それっていいのか、NEJM も許したからいいのかな・・・.

 韓国の発表は採用して、津田先生のだけは 3. について批判するっていうのは普通にダブルスタンダードでよくわからないなと思う.
 ちなみに上述の通り、韓国の報告は全年齢人口での話なので、今回の津田先生の発表は小児のみを対象としているから、同じ俎上には載せられないのは当然でしょう.甲状腺がんが最も多い年齢は 60 歳台以降ですしね(参照).

 あと余談ですが、「エコーの技術革新による過剰診断じゃないの」という話があるが、まあこれはやってみるとわかるんだけど、甲状腺エコーはかなり簡単な検査なので、5mm という大きさなら本当に余裕で見つけられると思う.確かに最近のエコーはめちゃくちゃきれいに見れるんだけど、それが生きるのは心エコーとか腸管エコーとかではなかろうか.現に、自分が勤めてる病院では20年以上前のエコーがあるけど、普通に腎臓とかきれいに見れますよ.まあ、エビデンスの話しているのになんでこういう当てずっぽうな批判が混じってるのかよくわからんけど.

 4. について.甲状腺がんは確かに予後良好らしい.頸部腫瘍の教科書では以下のように記述されている(以下、乳頭がんについて述べている 参考:Cummings Otolaryngology Sixth Edition).

Long-term follow-up is monitored with thyroglobulin levels, physical examinations, and ultrasound. The long-term prognosis is excellent, and survival rates are greater than 95%. However, children under 10 years of age have a higher risk of recurrence and mortality. Other risk factors for recurrence include positive family history of thyroid cancer, large tumors, and extracapsular invasion.
ちなみにこれは、小児の甲状腺がんの章での記述.大人に関しては
Most patients with papillary carcinoma do well regardless of treatment. 
一行目からこんな感じなので、ノリが違うことがわかる.まあそもそも、どんなに発育速度が遅くても、子供と大人では平均余命が当然違うわけで、「予後良好」の定義が違うんですよね.予後良好だから過剰診断だ、という批判は、小児に関しても言えるのかな?


 いろいろと議論をすることは、知見の整理になるし、興味深いことでもある.一方で我々医療従事者がこういう知見をどのように利用していくかということも考えたほうがよい.「放射線って子どもの甲状腺がんを増やすんじゃないの?」という疑問に立脚して、より安全な立ち振る舞いを考えたいというのが根本にある調査である.スクリーニング効果を放射線の効果だと混同して、危険を煽ることはよくないことなんだけど、でもオンゴーイングに起こっている健康問題について、「完璧な調査」はそもそも無理なんだと思う.また、研究仮説というのもそもそも「価値中立ではない」ことを理解しないといけない.批判ばかりをしていると、何かと中立であるべきと思ってしまうし、できれば中立なのがいいのかもしれないが、仮説を立てる段階で「放射線って甲状腺に悪いのでは?」と思わなきゃ始まらない研究だと思う.抗菌薬の適正利用、とか、人工呼吸器の正しい利用、とかいうのは、価値判断をしなくて済むので(どう考えても正しい話なので)、深く悩まなくて済むんだよなあ.

 津田先生の教室は、そもそもが水俣やカネミ油症などの公害などなどの疫学調査に端を発した教室で、医学会が「水俣の汚染と人々の健康被害の因果関係は定かではない」と言い続けたせいで、みすみす被害を増やしたという歴史に根ざした研究をやっているところです.当然、この教室が発表する研究は価値中立的ではないと思う.こういった価値観に関する議論は副次的だと思うので(すなわち、津田先生自身の考え方や発言の仕方を批判することは本質的でないと思うので)、そのへんは抜きに批判的吟味することが有益だと思いました.

2016年4月11日月曜日

インフルエンザ予防行動とその効果

 3月の小児科学会雑誌に面白い研究が載っていた.

園児,学童におけるインフルエンザ予防行動実践状況とその効果
日本小児科学会雑誌,120巻3号,612-622,2016年
http://www.jpeds.or.jp/journal/abstract/120-03.html#120030612

 対象となったのは佐渡島の園児・児童で,幼稚園・保育園に通園している全園児(2009/10 シーズン:1904人,2011/12 シーズン:1905人),及び小学校に通学中の全児童(2009/10 シーズン:2949人,2011/12 シーズン:2650人)であった.
 調査方法は,無記名回答式アンケートで,記載者は保護者,項目は,「年齢,現在の通園通学施設名,3月時点の通園通学施設名,インフルエンザ発症の有無,発症と判断した理由,型,時期,ワクチン接種の有無,主な予防行動実践状況,学級等閉鎖(学年閉鎖,休校,休園措置を含む)の有無,閉鎖中の外出状況」だった.予防行動は,具体的にはうがい,石けん手洗い,手指消毒,こまめな手洗い,人混み避ける,マスク着用,外出抑制の7項目が設定された.
 結果は,アンケート回収率は全体で 93.9% であった.ワクチン接種率は,2009/10 シーズンでは 59.3% ,2010/11 シーズンでは 63.5% であった.また,ロジスティック重回帰分析によるインフルエンザワクチン接種および予防行動のインフルエンザ発症に対する効果は,以下のようであった(値は,OR, 95%信頼区間の順).


2009/10
2010/11
ワクチン接種
0.28, 0.24-0.32
0.79, 0.69-0.91
うがい
1.11, 0.98-1.26
1.16, 1.01-1.32
石けん手洗い
1.05, 0.93-1.19
1.06, 0.93-1.21
手指消毒
1.05, 0.84-1.22
1.06, 0.97-1.62
こまめな手洗い
0.81, 0.69-0.93
0.84, 0.71-0.99
人混み避ける
1.16, 0.95-1.40
1.28, 1.02-1.61
マスク着用
1.26, 1.05-1.51
1.50, 1.17-1.93
外出抑制
1.44, 1.19-1.75
1.55, 1.21-1.99

 ワクチン接種は明確な予防効果がみられた.その効果は,2009/10 シーズンと2010/11 シーズンとでは比較的差があったようである.一方で予防行動は,「こまめな手洗い」でリスク低減効果がみられた以外に効果的なものはないという結果だった..一方で「マスク着用」や「外出抑制」については,「実践するとリスクが上がる」という結果が得られた.また,「こまめな手洗い」の実践率は23%と低いのが現状であり,必要性の周知が重要との筆者の意見もあった.また,学級等閉鎖時の外出の有無と外出先に関しては,学級閉鎖時に外出した園児・児童は約3割であり,多くはショッピングセンターへの外出をしていたという結果だった.

 この研究の,筆者らの仮説は,インフルエンザの予防行動が,発症を実際に抑制すること,であったと読むことができる.すでに効果が知られている「手指消毒」「咳エチケット」等(注1, 2)の他に,日本で良く推奨される「うがい」を含め,それぞれの実践が予防に役立つかどうかについて調べている.
 研究手法は,アンケートによる後ろ向き調査と,多変量解析(ロジスティック回帰分析)による影響度の評価を行っている.後ろ向き調査であり,アンケートを用いていることもあって,因果関係の存在の検証が必要となるが,アンケートの紙面上の制約もあってか,「(予防行動の)時期を詳細に問診する」ものとはなっていないようである.
 研究対象は,佐渡島の対象となる園児・児童であり,アンケート回収率も高く,選択バイアスがむやみに入り込む余地はないように思われる.複数年の調査であり,年度によるランダム性の排除も意識されている.
 データの収集については,アンケートで可能な範囲内で行われている.アンケート項目の,「石けん手洗い」「手指消毒」「こまめな手洗い」は,それぞれ重複がありそうであった.アンケートは基本的に自己申告制であるため,信頼性については疑問が生じる.また,予防行動については交絡因子の調整が困難だろう.予防行動として挙げられた7項目について尋ねてはいるものの,具体的な行動に表れない予防的実践,あるいは予防意識のようなものが効果を持つ可能性もある.そのあたりは,根本的には計測できないもののように思われる.その他,交絡因子として両親の学力レベルや収入,家族形態,共働きか否かなども影響はありそう

 全体として,多いnと高いアンケート回収率,地域網羅性があり,質の高い調査だと感じられた.根拠のある予防行動が「こまめな手洗い」であると言える状況であり,社会政策的にもさらなる手洗いの推奨すべきということになるだろう.うがいやマスク着用は,効果は認められなかった結果であり,手洗いに集中すべきということなのだろう.ワクチンの有効性は言わずもがなという状況であった.


注1 Preventing the Flu: Good Health Habits Can Help Stop Germs | Seasonal Influenza (Flu) | CDC http://www.cdc.gov/flu/protect/habits.htm
注2 インフルエンザQ&A|厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

2016年4月1日金曜日

疫学と公衆衛生学の違いとは

 興味深い記事を読んだ.

 (核の神話:21)低線量被ばくリスク、どう向き合うか(参照


 疫学者 津田氏と、相馬市の診療所で内科所長を勤められている 越智氏の対談風の何か.司会とコメンテーター2人という構成なので、本来的にはコメンテーター同士の議論を盛り込むつもりだったんだと思うが、どうも二人とも噛み合っていない.推察するに、

  1. 津田氏はかなり変な人である(これは喋ってみるとわかる)
  2. 越智氏が疫学を理解していない節がある
  3. 司会が疫学ないし公衆衛生学を理解していない

などの理由があろう.1. はまあ、パーソナリティの問題というか、津田氏はもともとかなりの天才肌であり、かつ独特の話し方をする方である.癖がわかればそんなもんかと思えるかもしれないが、初対面で話すには苦労するかもしれない.2. については、割に致命的な問題だと感じるので以下に少々書いてみることにする.

 まず、越智氏の以下の一言.
これは疫学と公衆衛生学の考え方の違いなんですね。福島で起きている健康被害は放射能で起きているよりもはるかに大きく、緊急性の高いものです。ひとつは避難行動による健康被害。これは起きてしまったことなんですけど、病院避難っていっても、対策本部では病院の避難先を決められる人がいませんでした。病院スタッフは自分個人のつてで電話して、そこに何人送るからって必死で電話したうえで、車も入ってこないので、不十分な装備のまま、バスなどでみなさんを避難させたわけです。長距離移動や急激な環境変化に耐えられない、あるいは看護師さんも足りないですから、不十分な申し送りによって相当の健康被害が出ました。
こういう発言が、インペリアルスクールカレッジオブロンドン卒の、おそらくMPH持ちの方から出るのが大変興味深いと思う.「疫学と公衆衛生学の違い」という指摘は完全に誤りで、単に「何を議論としているか」の違いにすぎない.「低線量被曝のがんに対するリスク」の議論中に、「でも、避難の手順が悪くて云々」「家に閉じこもっている方がリスクが高くて云々」という話に展開しようとしているだけということである.津田氏は、「低線量被曝にリスクがないという、旧来のしきい値理論、あるいは誤った言説に対して、それが誤りであることを認めた上で、被曝の詳細な情報を提供した上で、住民にどう判断させるか」を問題としている.もちろん、金銭的、心情的理由で故郷に留まりたい方もおられるだろう.そこにどういう支援をしていくかは、社会がその正義に従って検討する課題である.越智氏はのちに、「リスクは相対的である」のような旨の発言をするが、言葉を補えば、それぞれの選択肢に伴うリスクとベネフィットを比較考慮して、各々のベターと思う選択肢を選びつづけることが,生きていくことに他ならない.そのリスクの中には、定量化できるものとそうでないものとがあって、医学的に重要なテーマについてはそれらが徐々に定量化されつつあるのである.小児における低線量被曝の甲状腺癌に対するリスクも、今回明らかになりつつあるだろう.その定量化されたリスクと、まだ定量化されないリスクとをすべて勘案して、ベターな選択肢を選んでいくのである.越智氏は,「疫学と公衆衛生学の違い」と言っているが,恐らく「ミクロとマクロの視点の違い」のような意味合いで使用しているものと思う.しかし,これらの二つの学問は直接比較できない全く異質なものであり,扇風機と洗濯機を比較するようなものである.公衆衛生学は疫学の知見に基づいて,それぞれの施策の是非を問うものではないだろうか.
 対話の内容に戻るが,今、「低線量被曝をしても問題ない」という誤った認識を変えるべきだというのが津田氏の主張であり、それ以上でも以下でもない.

 以下の発言も、気になるところである.
私も「no threshold(しきい値なし)」仮説は正しいと思いますし、100ミリシーベルトっていうのは昔のデータですから、日本みたいにこれだけ健康大国になってきたら、100ミリシーベルトがしきい値だとは、やっぱり思わない。
これに関しても、不正確な認識だと思うので、以下にICRPが発行するレポートの一部を抜粋する(ICRP: Draft report: Low-dose Extrapolation of Radiation-Related Cancer Risk 参照
There is no direct evidence, from either epidemiological or experimental carcinogenesis studies, that radiation exposure at doses on the order of 1 mGy or less is carcinogenic, nor would any be expected because of the considerations outlined in Conclusion 1. There is, however, epidemiological evidence, unlikely on the wholel to be an artifact of random variation, linking increased cancer risk to exposures at doses on the order of 10 mGy. This evidence includes several case-control studies of leukemia and solid cancers among different populations of children exposed in utero to x-ray pelvimetry, cohort studies of breast cancer among women given multiple fluoroscopy examinations during treatment for tuberculosis or scoliosis, with average breast doses on the order of 10 mGy per examination, and the observation that risk of mortality and morbidity among atomic bomb survivors from all solid cancers combined is linear in radiation dose down to about 100 mGy. 
ICRPが2004年に出したレポートで、すでに「1 mGy レベルでは発ガン性は判然としないが、10 mGy レベルではがんのリスク増大と被曝の関連性が見られる」という記載がある.ICRPが信じられない、という方にはさらなる説得ができないが、権威ある国際機関が2004年の時点でこのように指摘しているわけだから、「〜とは思わない」のような個人的意見のレベルではない.

 話全体を通じて、確かに津田氏の発言は現場感のないものに聞こえるし、終始「低線量被曝と発がん」という内容にのみ触れているため、「温かみがない」などという感想を抱かれるかもしれない.一方で、越智氏はここの症例ベースで、地域住民に対する配慮に満ちた発言が多く見られる.しかし、越智氏のあり方が「公衆衛生学を表している」かというと、首肯できるものではない.そのような、見た目には正しそうだが実情よくわからん、といった状況下で、良さそうなことが実際良いかどうかはわからない、というのが我々医師の苦い経験でもあり、良さそうなことも疑って、良いなら良いという理由を作り上げ、敷衍可能な形にすることが科学的な態度なのではないだろうか.「科学がすべてじゃない」のは百も承知である.
 津田氏の教室はもともと、熊本の水俣や、ヒ素ミルクなどの公害事件に関し、疫学調査を進めて検討を行う中で、「オンゴーイングな社会問題の中で、疫学がスピード感を持って科学的根拠を示し、保健衛生行政の意思決定を補助しないと、水俣と同じ轍を踏むことになる」という問題意識の元に研鑽している教室である.そういう意味で、今回の福島原発事故の件を危惧していて、早期の情報発信を行っているのである.

 どっちつかずのことを言い続けて住民の判断の拠り所を不明瞭にすることより、限られた範囲であるが科学でリスクを明確化することで、判断材料の一つとして役立ててもらう事の方が有益と感じるが、どうだろうか.

2016年3月21日月曜日

情報リテラシーの問題について.

 最近、HPVワクチンに関連して、以下のような報道が各新聞社・テレビ局・ニュースサイトであったので少しメモをしておく.

 子宮頸がんワクチン副反応「脳に障害」 国研究班発表(参照

 科学的根拠をどう解釈するかということについて、一般市民の理解を前提にすることは困難だと思うし、それはメディアの側で一定程度は行うべきと思うが、このザマであるから手に負えない.また、信州大学の池田先生という方は、どういうつもりでこういう結果を発表するのだろう.厚生労働省も、こういう研究結果を吟味せず公開するのはいかがなものか.

 池田先生のプレゼンテーション(参照


 「NF-κB ノックアウトマウスを使う」という方法論自体が、特殊な状態すぎて結果の価値を損なうという話もあるが(参照)、まず動物実験が医学における科学的根拠で、どのような立ち位置なのかを理解しておく必要がある.
 医学研究では特に、「エビデンスレベル」と称して、その研究が根拠としてどれくらい信頼できるかを評価する基準がある.全世界共通である.あまりいい参考文献がネット上に発見できなくて恐縮だが、日経メディカルの記事(参照)が最もまとまっていた.以下引用.

4)診断
1a レベル1の診断研究のシステマティック・レビュー。複数の臨床施設を対象としたレベル1bの研究で検証されたclinical decision rule(CDR)
1b 適切な参照基準が設定された検証的コホート研究、あるいは単一の臨床施設で検証されたCDR
1c 絶対的な特異度で診断が確定できたり、絶対的な感度で診断が除外できる場合
2a レベル2の診断研究のシステマティック・レビュー
2b 適切な参照基準が設定されている探索的コホート研究。CDRの誘導のみ、あるいは妥当性が分割サンプルでしか証明されなかったCDR
3a 3b以上の研究のシステマティック・レビュー
3b 非連続研究、あるいは一貫した参照基準を用いていない研究
4 評価基準が明確でない、あるいは独立でないケースコントロール研究
5 系統的な批判的吟味を受けていない、または生理学や基礎実験、原理に基づく専門家の意見

 今回我々が検討しているのは、HPVワクチンによる神経障害や脳機能障害が起こるのかどうか、という診断上の疑問である.実験用マウスによる研究は、上記における「基礎実験」であるから、エビデンスレベルは5であり、最低である.
 低いことが悪いことではなく、基礎実験の積み上げがヒトへの応用を可能にするわけだから、その点で価値のある研究ではある.一方で、「動物実験の結果を、すぐにヒトに応用するのはダメだ」ということは理解されておくべきである.

 繰り返しになるが、エビデンスレベルが低いことは、研究の質とは別である.NF-κBノックアウトマウスにおいてHPVワクチンを接種すると中枢神経に抗体が蓄積する、という知見を得たこと自体は新規性があって(多分)いいんだけれど、それをそのまま我々の意思決定に応用するのはどうよってところに違和感を持つべきであるということである.
 各報道メディアには、科学部とかそういう専門の集団がいるはずであろうし、吟味があって良いと思うのだけれど.

 正直なところ、メディアには期待できないので、少しでも市民レベルでリテラシーが向上してほしいと思う.

2016年2月19日金曜日

インフルエンザについての話題

インフルエンザウイルス感染症の流行シーズンとなりました.
今年は1月下旬からの流行で,例年より遅い流行となったようですが,医療機関には連日発熱を主訴に来院する患者がおられます.(参考

インフルエンザを疑った場合の適切な受診行動は以下です.


  1. 発熱(たいていは38度以上),頭痛,関節痛や筋肉痛などの全身症状が主体で,咳,痰などは主体となりにくいです.腹痛や下痢が出ることもありますが,胃腸炎ほどひどくないことが多いです.また,職場,学校,家族のインフルエンザ感染がある場合は,自分も罹っている可能性が高くなります.
  2. 上記の様に,典型的な症状+濃厚な感染者との接触があれば,臨床的に(症状のみで)診断することができます.
  3. インフルエンザの迅速検査は,鼻に綿棒を入れて鼻の奥の液を回収し,検査するものです.インフルエンザ迅速検査は,発熱して大体12時間以降にならないと陰性になる可能性が高くなります.発熱直後は迅速検査を実施しない医療機関も多いでしょう.
  4. このため,検査を希望する場合は12時間以上開けてから医療機関を受診することが望ましいです.
  5. インフルエンザの治療を希望する場合は,発症して24-48時間以内に投薬開始すればよいことになっていますので,「可能な限り早く受診する」必要はありません.上記の様に,検査で陰性となるタイミングでの受診はあまり得策ではないでしょう.
  6. インフルエンザは,治療薬なしでも治る病気です.抗インフルエンザ薬は,発熱期間を平均して約1日ほど短くする作用があると言われていますが,同時に副作用も良く報告されています(多いのが嘔気などの消化器症状).「1日解熱が早まることと,薬の副作用が起こる可能性」との比較が必要です.
  7. 受験生,自宅に乳児や高齢者など免疫の弱い人がいる場合,喘息,神経筋疾患,心臓病,その他考慮すべき既往がある場合は積極的な抗ウイルス薬の適応と考えられます.
  8. インフルエンザを最も効果的に予防できるのは,現時点ではインフルエンザワクチンです.

3 については,以下の様な調査が発表されており,12時間未満ではインフルエンザA型では感度 90%未満,B型では80%未満という数字です.12時間を越えれば,A型に関しては100%近い感度を得られます.(三田村敬子ら,ウイルス 第 56 巻 第1号,pp.109-116,2006)

6 について.様々な研究をまとめて評価する,"コクランライブラリー Cochrane Library"のまとめによると,以下の様な結論となっています.(小児の場合)(Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in children
Oseltamivir and zanamivir appear to have modest benefit in reducing duration of illness in children with influenza. ... Based on published trial data, oseltamivir reduces the incidence of acute otitis media in children aged one to five years but is associated with a significantly increased risk of vomiting. ... The benefit of oseltamivir and zanamivir in preventing the transmission of influenza in households is modest and based on weak evidence. ... However, the clinical efficacy of neuraminidase inhibitors in 'at risk' children is still uncertain. ...
オセルタミビルとザナミビルは,小児のインフルエンザにおいて,病気の期間を減少させる中等度の効果がありそうである.(中略) 出版されたデータによると,オセルタミビルは1-5歳までの小児の急性中耳炎を減少させた一方で,嘔吐のリスクを著明に増大させた.(中略) オセルタミビルとザナミビルの,家族内でのインフルエンザの伝播の予防については,弱い根拠に基づいた中等度の効果があると考えられた.(中略) ノイラミニダーゼ阻害薬の「リスクを持つ児」への効果は定かではない.

最後に,最も本質的ではありますが現代社会が実現できないこと.

  • インフルエンザは何もないところから起きることはありません.あなたがインフルエンザになると言うことは,「誰かから移された」ことを意味します.少々体調が悪くても学校や職場へ行くなどの行動が,インフルエンザを広げてしまう結果になりかねません.特に社会人は簡単に休めないことは事実ですが,移される側の身になって考える事も必要です.会社の偉い方,学校の先生方も,鼻汁,咳嗽,微熱,倦怠感などの感染徴候がある場合は,早めに休める環境を作って頂きたいと思います.
  • 学校の皆勤賞,会社の無理な出勤はやめた方が良いと思います.


2016年2月15日月曜日

経口補水液についての話

 上司の小児科医と話していたことですが,よく脱水に対してオーエスワンやポカリやアクエリアス,と言いますが,塩分+水分の補給であれば味噌汁やスープ+お茶で十分だということももっと知られて良いと思いました.

 オーエスワンは,ナトリウムを 50 mEq/L 含有しています.これは病院で使用する「1号液(開始液)」の半分強,「3号液(維持輸液)」よりやや濃いナトリウム濃度でした.ちなみに生理食塩水(0.9%食塩水)は 154 mEq/L ですからかなり濃い事がわかります.
 脱水の際に問題となるのは,血管内に水分を十分とどめておくことですが,これに重要なミネラルがナトリウムです.ナトリウムは NaCl の化学式で知られる様に,いわゆる食塩によって摂取できるものです.塩分をしっかりととることが脱水の補正に関しては重要となります.なお,塩分が多ければ良いというわけではなく,例えば海水は3%強の食塩水と言えますがこれは生理食塩水の3倍であり,体よりも濃いナトリウム濃度ですから,逆に水分が吸い取られる結果となりますので,濃すぎる塩分は脱水の治療になりません.

 さて,脱線しましたが,オーエスワン 500ml に含まれる塩分量は,食塩にして 1.5g ほどといわれています.これは味噌汁1杯くらいの塩分に等しいそうです(参考 pdf).

 従って,味噌汁にお茶を2杯ほど飲めば,オーエスワンと同様の効果を持つ補水になると考えられます.もちろん,コンソメスープでも梅干し入りお茶漬けでもよいです.

 ・梅干し→1~2粒くらい(参考
 ・コンソメスープ→キューブ1個(参考


 脱水が気になったら,ご飯は無理しなくていいですが,お味噌汁,スープだけでも飲んで,お茶も飲んで,ゆっくり休んで頂ければと思います.
 個人的には,オーエスワンの味は苦手なんですよね~.

2015年6月17日水曜日

救急車を有料化すべきかどうかについての話

 先日、Yahoo! ニュースで以下のような記事が掲載されました.


救急車は有料化すべきか…搬送者ほぼ半数は軽症、緊急時の影響懸念参照

 内容はガバガバなんですけど、産経ですからまあ・・・という感じです.
 救急車を有料化すべきかどうかの前に、なぜ救急要請が増えているのか、その背景への考察が乏しく、実りのない議論になっています.救急要請増加の背景としては、ひとつに高齢化の進行による医療ニーズの単純な増加があるでしょうし、マルチプロブレムを抱える高齢者が臓器別に分断された医療を施されていて、それが破綻することによる医療供給体制の問題もあるでしょうし、人口の流動性が高まって、老老介護や施設介護などが常態化すること、あるいは核家族化が進むことなどの、家族像の変化の問題もあるでしょう.

 帝京大のお医者さんがどういうトレーニングを積まれたのか知りませんが、恐らく長い間救急の初期診療などに関わりもしない人が「不適切利用が多いから有料化」なんて言っているわけで、現場感の乏しさ、医療者としての器の狭さに目を覆いたくなる内容です.一般市民、特に老老介護で体調も悪い時に「適切利用」を判断することなどできないでしょう.また、医学界が一般市民向けに十分な教育や相談窓口を提供してきたかというと、お粗末極まりないわけですから、自業自得の面もあるわけです.

 対するNPO理事の方も、ご自身の体験として苦労されたのは理解できますが、不安だから無料にしましょうという発想で制度設計できるわけではありません.資源は希少ですから適切な利用を考えるわけです.また、憲法25条を救急車制度に直接引用するのはあまりに理論が飛躍しています.

 自分はもはや、完全に医療従事者としてしか発言できませんが、それでも日々、診療をしていて患者・家族の「不安」がいかに大きいか推測はできます.(失礼な言い方になりますが)素人目線で考えることを忘れてはいけないと思います.また、日本の社会人として、少々の熱や風邪で会社を休めないというのは理解はすべきと思います.救急車や、時間外外来の不適切利用は、ただ「救急車を有料化」というような矮小化した問題提起にあてはめられるべきではありません.ましてや、患者・家族への批判となるべきではないと思います.できることはまだまだあると思います.

2015年6月12日金曜日

ランセット誌より セミナー;中東呼吸器症候群

Seminar; Middle East Respiratory Syndrome
The Lancet. 2015 Jun 03.
Alimuddin Zumla, David S Hui, Stanley Perlman. 


要旨

 中東呼吸器症候群(MERS)は、新型のシングルストランド・プラスセンスRNA ベータコロナウイルス(MERS-CoV)による、致死率の高い呼吸器疾患である.MERS-CoVの宿主であるヒトコブラクダは、直接あるいは間接的にヒトへの感染に関与しているが、正確な伝播様式は不明である.このウイルスは、2012年6月にサウジアラビアのジッダで重篤な呼吸器疾患により死亡した患者から初めて分離された.2015年5月31日までに、1180例が検査室で確認された症例(うち483人が死亡、死亡率は40%)であると、WHOからの報告がある.大部分のMERS症例は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦で発生しているが、中東からの旅行者や、中東で患者と接した者によりヨーロッパ、アメリカ、そしてアジアでも発生が報告されている.MERSの臨床的特徴は、無症状や軽い症状から、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全から死に至るものまで様々である.特に、なんらかの基礎疾患のある者では重症化しやすい傾向がある.MERSに対する特異的な薬物治療は存在せず、医療施設での感染拡大防止のための、感染予防およびコントロールが極めて重要である.MERS-CoVは依然として風土病であり、低レベルの公衆衛生上の脅威である.しかし、ウイルスはヒトーヒト感染を起こしやすくなる突然変異を起こす可能性もあり、パンデミックを起こす可能性は増大している.

本文


地理的分布および調査

 2012年6月にサウジアラビアのジッダで最初の報告.その後、2015年5月31日までにWHOで把握されている症例は以下のとおり.サウジアラビア、アラブ首長国連邦での報告がほとんどであるが、その他の地域でも報告がある.アラビア半島周辺が多いが、中国、東南アジアなどでも報告がある.遠方の地域では、韓国はかなりの症例数があることがわかる.




ウイルス学

 複雑かつ専門的であるため割愛する.シングルストランドRNAウイルスであるが、ゲノム解析はされていて、特異的な塩基配列がPCRの標的として知られてる.

疫学

 まず大前提として、MERS-CoVの正確な感染源・感染様式は不明である.
 コウモリに感染するコロナウイルスとMERS-CoVが、ヒトの同じ細胞受容体を利用して感染することがわかっている.しかし、コウモリからMERS-CoVが検出された例は未だない.その他に、アラビア半島における他の動物における、MERS-CoV感染の血清学的検証を行ったところ、オマーンのヒトコブラクダでは100%が、Canary Islands (スペイン)では14%が、抗MERS-CoV抗体を持つことがわかった.一方で、牛、ヤギ、羊からはMERS-CoVは検出されなかった.

ラクダからヒトへの感染

 ラクダからの感染がMERS-CoV感染症に関連しているが、ラクダと接触した患者はほとんどいない.しかしこれは、より直接的でない方法での曝露による、交絡と考えられる.すなわち、サウジアラビアでは珍しいことではないが、ラクダの乳を未滅菌のまま飲用することで、感染源に曝露していたと考えられるのである.しかしいずれにせよ、ラクダとの接触が乏しいにも関わらずMERSを発症することは、ヒトーヒト感染が主体である可能性や、他の媒介生物が存在しており、ラクダーヒト間での感染の交絡因子となっている可能性などを示唆する.
 また、これまでMERSの発症は一年を通して報告があるが、季節性はありそうである.上記のFigure 1からは、2013年および2014年は4-5月に多いが、2014年では9-10月にも小さなピークがある.

ヒトからヒトへの感染

 ヒトーヒト感染については、疫学調査とともに、遺伝子学的調査も行われている(疫学調査:発症した場所、接点はどこか、リスクは何か、など / 遺伝子学的調査:検出されたウイルスを解析して、同じ遺伝子配列を持つかどうかで直接の伝播か、持ち込みによる感染かを確認する).感染の大部分は飛沫感染または接触感染の形をとると思われるが、空気感染やその他の媒介による感染の可能性も否定はできない.
 また、MERS-CoVの伝播には感染患者やその疑いのある患者との濃厚接触が必要とされているが、一方で実際に濃厚接触したとしても実際に伝播した例はほとんど観測されていない.R0(基本再生産数、一人の患者が何人にうつしたか)は、MERS-CoVでは0.7未満とされていて、SARS CoVが1以上とされているのに比して感染力は小さいと考えられている.

臨床症状

 MERS-CoV感染症は、無症候性感染から重篤な肺炎、ARDSを伴うものや敗血症性ショック、多臓器不全などにより死に至るものまで多岐にわたる臨床経過をとる.MERSとSARSの臨床症状の比較については以下のとおり.


 潜伏期は平均5.2日で2週間以内に発症.現時点で再生産数は1未満である.感染者は大人が多い.死亡率は40%に達しており、SARSの9.6%に比べるとかなり高い死亡率.また増悪するスピードも1週間前後で人工呼吸器管理に至るケースが多いのに比べて、SARSは11日間が平均である.
 症状として多いのは、発熱、悪寒戦慄、咳嗽などであるが、呼吸器感染症に非特異的に見られる所見である.検査としては、SARSと同様重症ウイルス感染症として、白血球減少、特にリンパ球減少が見られることがある.その他に、消耗による凝固異常、クレアチニンや乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)や肝酵素の上昇などが見られることがある.また、他のウイルスとの共感染(パラインフルエンザ、ライノウイルス、インフルエンザAウイルス(H1N1) pdm、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザBウイルス)や、細菌感染(Klebsiella pneumoniae, Staphylococcus aureus, Acinetobacter spicies, Candida spicies)などの報告もある.
 検査は胸部レントゲン検査、血液検査、尿検査、糞便検査、呼吸器検体などを対象に行う.レントゲン上ではARDSの所見を始め様々な所見を認め得る.ウイルスゲノム等は呼吸器検体(上気道より下気道検体の方がよりゲノム数が多い)に多く、血液や糞便などにも検出されるが量は少ない.

診断

 診断には、決まった方法がある.もっぱらウイルスRNAをPCRなどの遺伝子学的検査で検出すれば感染症と考えられる.リアルタイムPCRの対象となるのはウイルス特異的な遺伝子配列で、E geneの上流(upE)、ORF 1a、ORF 1bが感度・特異度が高いとされている.
 なお、感染経路調査の一環として、上下気道検体、血液、尿、便の検体を同時に検索することが推奨されており、未だ不明な点が多いMERSの研究調査に資されている.

治療

 特異的な治療法はなく、支持療法が基本となる.インターフェロンや抗ウイルス薬(リバビリン等)、既感染者の血清中のモノクローナル抗体などは、研究レベルでの報告はあるが、未だ確固とした治療法として認められてはいない.

予防

 感染防御、感染コントロールのための方法は、飛沫対策(患者の1m以内に近づく場合はサージカルマスクを使用する)および接触対策(使い捨てのガウンと手袋の使用、適切な破棄)である.また、MERS-CoV感染が判明している患者に接するには、ガウン、手袋、眼球保護具(ゴーグル、フェイスシールド)、また呼吸器感染防御のため、必要時、規定のN95マスクを使用する.患者は陰圧個室隔離する.また飛沫核を伴うような処置をする場合は、処置室は1時間に少なくとも6回換気のできる部屋で空気感染防御を行うべきである.
 MERS-CoV感染したラクダについては、鼻炎症状を伴うこともあるし、無症状のこともある.また鼻汁、涙、糞便などからウイルスを拡散する可能性がある.感染したラクダの生乳からもウイルスを検出する.これらと接触しないようにすべきである.

未解決の事柄

 MERS-CoVが発見されて約3年が経とうとしているが、重要な疫学的情報、すなわち感染経路、病原性、そして治療法が、依然として未解決のままである.ウイルスは人獣感染症である可能性が最も高いものの、直接または間接接触、汚染された食物や加工食品などからも感染する可能性が残されている.いくつかの研究ではヒトのMERS発症とラクダからの感染の関連性が示唆されているが、その起源や地理的分布、正確な感染様式、コウモリ、ラクダそしてその他の動物のMERS-CoVとMERS-CoV様感染症とヒトとの関係(relationships between MERS-CoV and MERS-CoV-like infections in bats, camels, other animals, and human beings)など、不明な部分は多い.
 以下の一文は、どう理解すればいいのかよくわからない.”The sporadic nature of many cases of MERS has hindered in-depth case-control studies and investigation of rates of secondary transmission, including establishing the role of subclinical infection in human-to-human transmission.” 散発的な症例報告があるが、二次感染率や不顕性感染であってもヒトーヒト感染するのかについては不明であるということか(散発的なため、十分な解析ができない、ということだろうか)?
 MERS-CoVはヒトーヒト感染を起こすのに十分な感染力がないため、パンデミックを起こす状態ではない.どれくらいの間、ヒトへの持続感染を起こすかがわかれば、ヒトへの適応能の評価ができるかもしれない.動物モデルを使って、重症感染症の病態解析を行う必要性もある.コロナウイルスは遺伝子変異率が高く、アラビア半島の国々でMERS-CoV感染症は発症し続けているため、これらの研究は可及的速やかに進める必要がある.パンデミックを起こしうるMERS-CoVが出現する可能性を視野に入れた取り組みが必要である.

2015年5月31日日曜日

「拭い液」の採取方法

 医学部で教わることは、本当にごく限られた知識である.あるいは、6年間ないし4年間(1~2年生の間は一般教養が課されることが多い)で、あれだけの医学知識を詰め込んだのが驚異的なのかもしれない.
 しかし、いずれにしても実地臨床に立つと、本当に些細なことでも「実はよく知らない」ということがある.もちろん、ぼく個人の純粋な不勉強によるものなのかもしれないが.

 小児科領域に限らず、ウイルスや細菌感染の迅速検査が必要になった際、「咽頭拭い液」や「鼻腔拭い液」などが必要になることがあるが、これらの正しい採取方法を知らなかったのでまとめておく.なお、出典はこちらである(参照 PDF).

スワブの持ち方: これも知らなかったが、ペンの様に持つと良いらしい.コツは、先端をフリーにしておくこと、すなわち相手が暴れても「突き刺さずに済む」ように持つことの様だ.確かに、子どもの場合はよく暴れる.これで鼻出血などを起こしたことはないが、心がけるに越したことはない.なお、よくあるスワブは「筒と一体化しているもの」で、この場合、持ち手の部分が存在するためペンシル持ちは難しいが、これも軽く持つ方がよいのだろう.

鼻腔拭い液: 例えばNGチューブの挿入もそうだが、基本的には鼻腔の「床」に沿わせる様に挿入する.ぼくは突き当たるまで挿入していたが、当然、年齢や大きさによって目安があるらしい.乳児は4cm、幼児は4~5cm、学童は5~6cmほど挿入し、突き当たる数mm手前を狙うと良い.また、挿入してから数秒待って、鼻汁がスワブに染みこむまで待つのが良いらしい.注として書かれているが、暴れているときはいったん手を離す、というのも面白い.

咽頭拭い液: 咽頭は、咽頭後壁、口蓋、扁桃をまんべんなく数回擦過する必要がある.すなわち十分に咽頭を視認しながら実施しなければならない.口蓋垂を跳ね上げる様に、後ろの上咽頭まで擦過する、というのもへぇという感じ.

 上記は、教科書からの出典ではないが、ある程度の参考にはなると思う.

2015年5月16日土曜日

米国小児科学会の細気管支炎のガイドライン 2014.

Clinical practice guideline: the diagnosis, management, and prevention of bronchiolitis.
Pediatrics. 2014 Nov;134(5):e1474-502. doi: 10.1542/peds.2014-2742.

診断

1a. 細気管支炎の診断および疾病重症度評価は、病歴および身体診察によって行われるべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
1b. 重症化への危険因子、すなわち生後12週未満、早産の既往、循環・呼吸系疾患の存在、免疫不全などを評価するべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
1c. 細気管支炎の診断が病歴および身体診察で行われた時は、レントゲンや血液検査はルーチンには行われるべきではない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)

治療

2. 細気管支炎の診断となった乳児または小児に、アルブテロール(またはサルブタモール)の吸入を行うべきではない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
3. 細気管支炎の診断となった乳児または小児に、エピネフリンの吸入を行うべきではない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
4a. 細気管支炎の診断となった乳児または小児に、救急外来において、高張生食の吸入を行うべきではない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
4b. 細気管支炎の診断となった乳児または小児に、入院中、高張生食の吸入を考慮しても良い.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Weak Recommendation [ランダム化試験における一致しない結果])
5. いかなる状況でも、ステロイドの全身投与は行うべきではない.(Evidence Quality: A; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
6a. 酸素飽和度が90%以上であれば、追加の酸素吸入は行わなくても良い.(Evidence Quality: D; Recommendation Strength: Weak Recommendation [低レベルのエビデンスおよび最初の原則に基づく])
6b. 持続酸素飽和度測定は、行わなくても良い.(Evidence Quality: D; Recommendation Strength: Weak Recommendation [低レベルのエビデンスおよび最初の原則に基づく])
7. 胸部の理学療法は行うべきではない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
8. 同時に細菌感染が存在、ないしその可能性が強く疑われる場合を除いて、抗菌薬投与は行うべきではない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
9. 経口での水分摂取が困難な場合は、NGチューブや経静脈的な補液を行うべきである.(Evidence Quality: X; Recommendation Strength: Strong Recommendation)

予防

10a. 在胎29週0日以上で、その他に特に既往のない児にはパリビズマブを投与すべきでない.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
10b. 在胎32週0日未満の未熟児で、少なくとも生後28日の間に21%より多くの酸素を要した児で、血行動態の異常がある心疾患や慢性肺疾患を持つ場合は、生後1年間の間パリビズマブを投与すべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
10c. パリビズマブの適応のある乳児には、RSウイルスのシーズンに最大で5ヶ月の投与(15mg/kg/dose)を行うべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
11a. すべての人々は、患者に触れる前後、患者の周囲の物に触れた後、および手袋を外した後は、手指消毒を行うべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
11b. 細気管支炎の小児のケアに当たる時は、擦式アルコールによる手指消毒を行うべきである.アルコールが使用できない場合は、せっけんと流水による手指消毒をすべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
12a. 細気管支炎の評価の際は、その乳児または小児のタバコの煙への曝露の有無を聴取すべきである.(Evidence Quality: C; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
12b. 小児の細気管支炎の評価において、保護者に対してタバコの煙や、禁煙などについて助言を与えるべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Strong Recommendation)
13. 呼吸器感染症の罹患率を下げるためには、少なくとも6ヶ月の完全母乳を勧めるべきである.(Evidence Quality: B; Recommendation Strength: Moderate Recommendation)
14. 臨床医および看護師は、個々人や家族に対してエビデンスに基づく細気管支炎の診断、治療および予防について教育すべきである.(Evidence Quality: C; observational studies; Recommendation Strength: Moderate Recommendation) 

2015年5月14日木曜日

肉のソースにバルサミコ酢を使う.

 旨かった.
 バルサミコ酢というのをはじめて使ったが、バターとバルサミコの香りは非常にやばいので、確実に再度やると思う.おそらくなんの肉でも合うだろう.バルサミコというのをよく知らなかったが、Wikipediaによると厳格に基準があるらしく、流通している多くのものはカラメル色素などを使用した「模造品」なのだそうだ.200mlほどで700円弱だったから、安い調味料とはいえないけれど、おそらく「模造品」の方だと思われる.まあ、旨かったからいいと思う.

 レシピは簡単で、

  • バルサミコ酢:肉の量に合わせて大さじ1〜程度
  • バター:5〜10g程度でいい
  • 醤油:小さじ1程度 少量
  • ニンニク:おろしニンニク半かけ程度がよい


以上を、肉の焼きの最後に突っ込んで、ちょっと強火で水分を飛ばせば完成.簡単だね〜.あまりに旨いのでやばいです.

2015年5月11日月曜日

小児救急部門における肺炎の予測

Prediction of pneumonia in a pediatric emergency department.
Pediatrics. 2011 Aug;128(2):246-53. doi: 10.1542/peds.2010-3367. Epub 2011 Jul 11.



 先日のER当直では、「長引く発熱」ないし「頑固な咳嗽」に加えて、「右背側肺底部領域の呼吸音減弱」があって、胸部レントゲン検査を行って、肺炎の診断に至った2例があった.重要と思われるポイントは2点あって、一つは検査閾値の問題、もう一つは身体所見の信頼性である.小児科研修を始めて間もないので、どういう症例で検査をするかというのは大きな問題である.上司曰く「明確な基準はないが3日以上の発熱には検査を加えていい」という意見もあるらしい.これは2点目の問題とも絡むのだが、小児の場合、身体所見の信頼性が低い場合もあって(例:深吸気の聴診などまずできないし、泣いていることもある)、身体所見の精度を上げづらく、検査閾値を左右するまでに至れないケースが少なくなさそうなのであった.
 このような救急外来における、肺炎予測の研究があったので、読んでみようと思う.

 この論文でも、冒頭に「none have specifically addressed the criteria for obtaining a chest radiograph(胸部レントゲン検査を行うための基準を示した研究は見当たらない)」と言っているように、どういう所見を以って胸部レントゲン検査を実施するか、といった判断基準を見出すところが主要なモチベーションとなっている.

要旨
目的:救急外来において、肺炎が疑われる患児での、病歴・身体所見とレントゲン上の肺炎の関連性を評価するための研究であり、胸部レントゲン検査を実施する臨床判断ルールの作成が目的である.
方法:近郊部の小児救急外来における21歳未満で、肺炎が疑われ胸部レントゲン検査が実施された患児に対して前向きコホート研究を実施した(n=2574).肺炎は、放射線科医による胸部レントゲン検査の読影結果により、以下の2つのグループに分類した.レントゲン上の肺炎(確診例および疑い例を含む)と、確定肺炎に分けられた.多変量ロジスティック回帰モデルにより、肺炎状態を従属変数、病歴および身体所見を独立変数として評価した.また、再帰分割分析(変数の値に基づいて対象者を逐次2分して行くことによって、高リスク者同定感度が最高になる変数の組み合わせを求める方法、詳細わからず・・・)も実施した.
結果:16%の患児がレントゲン上の肺炎を呈した.胸痛、局所性のラ音、発熱期間、トリアージ時点でのオキシメトリの値が有意な肺炎予測因子であった.頻呼吸、陥没呼吸、呻吟は肺炎との相関が認められなかった.低酸素血症(Sat<92%)は最も強い肺炎の予測因子であった(odds ratio: 3.6 [95% confidence interval (CI): 2.0–6.8]).再帰分割分析ではSat>92%、発熱の病歴なし、局所的な呼吸音減弱およびラ音なしであれば、レントゲン上の肺炎は7.6% (95% CI: 5.3–10.0)であり、確定肺炎は2.9% (95% CI: 1.4 – 4.4)であった.
結論:病歴および身体所見は、レントゲン上の肺炎のリスクの層別化に利用できるものである.



 結論として筆者は、病歴および身体所見は、ある程度のリスクの層別化には役立つ可能性があるものの、十分な検出力はないとしている.また、独立変数(説明変数)としての各項目も、完全に独立ではない可能性が高い(例えば、SpO2の値と聴診所見は、「診察者がSpO2を見ずに聴診する、というのはERとしてあり得ない」点で独立でない可能性がある)ことが指摘されている.また、本研究の対象者の組み入れ基準が「胸部レントゲン検査を行った者」となっているため、熱や咳嗽を主訴としたすべての患児を対象としていないことによる選択バイアスが存在する可能性にも触れている.

 読後感として、呼吸音減弱の検出力は、感度高め特異度低め(無気肺とかを拾う可能性)で、最終的に肺炎の診断能は低い、みたいなものなのかなと思ったり.呼吸促迫や呼吸不全のORは低いが、SpO2低下のORが高いのはちょっとよくわからない.72時間続く発熱のORが高いのは、身体所見が乏しいのに開けてみると肺炎でしたというケースが少なくないのを説明している(が、なぜ小児で症状や身体所見が出にくいのかは不明).特に最後の発熱については、経験上そうだけど、統計的にもそうなんだ、というのをよく表していて興味深いと思った.
 一方で、筆者も挙げているように「対象の組み入れ基準が胸部レントゲン検査を行ったこと」であるのが、この研究の大きな弱点となっているように思われる.一般臨床をやっていく上で、論理の流れとしては「症状、病歴、所見→検査」であって、検査が大前提となった研究にどこまで意義があるのかは議論すべきところだろう.裏を返せば、「レントゲンをするほど肺炎を疑っていた」症例が多く含まれていることが推察されるから、過大評価の危険性がある.ただでさえ大したORが出せなかったのに、これが過大評価だったとなれば研究意義が損なわれることは明白である.

 この研究の”balancing of the paper”を評価すると、「強くはない」となってしまうだろうか. 

2015年4月5日日曜日

転職、つまり後期研修の開始

 この3月をもって、初期研修を修了し、4月から別の病院で後期研修を開始した.小児科をやりたいと思っていたので、現在、とある県の小児病院で研修をしている.
 一通りのオリエンテーションは終わって、自分は総合診療科の病棟から研修開始となる.当院は、おそらく全国的に見てもかなりスタッフ数が多く、曰く、都内の某大きな病院(ここ)の2倍近いんだとか(おそらく、対患者比).

 話は変わるが、医師の採用ってどうも、待遇などに関しての情報が不明瞭なのがまかり通っている様子である.これは、時間外が他職種に比してあまりに多かったり、よくわからない手当(診療手当、被曝手当、などなど)が多かったりすることによるんだと思うけど・・・当院もやはり、ベースの給料というのは知らされずであったが、初任給調整手当(たぶん4月の給料として払われる分)が明記してあったのは前の職場とは明らかに違う.また、労働組合がかなり強力なようで、時間外手当が80時間/月 までつくらしい.さらに、科長が日勤(休日の日中の労働ローテ)や当直の割り振りを決める際に、適度に時間外をつけられるようにシフトを組むとか、何とか週××時間の労働時間に”届く”ように調整するとか、およそ医師不足とは縁遠い感じの職場である.

 初期研修の頃は、当直月10回で、残業は当然だったけど、今は労働条件としては大きく改善した.一方で小児病院であるため、いわゆる3次病院としてかなり難治な症例が多く、勉強が全く追いつかないのが現状である.しかし、これまで一般的な疾患を中心に見てきて偏った鑑別を、ここでやっと、小児科らしく再構成できる/すべき時が来たとも言える.今、勉強していて、小児の失神の鑑別にMELASがあるのをハッと思い出した.珍しいが、外すことはできない疾患がたくさんあるし、実際に患っている患児・家族に会うことができるのは貴重な経験である.学び多くなることが期待できるし、楽しみである.

2015年2月17日火曜日

ステント時代における不安定狭心症/非ST上昇性心筋梗塞に対する早期侵襲的治療と保存的戦略の比較

Early invasive versus conservative strategies for unstable angina and non-ST elevation myocardial infarction in the stent era.
Cochrane Database Syst Rev.2010 Mar 17;(3):CD004815. doi: 10.1002/14651858.CD004815.pub3.
 不安定狭心症(UAP)および非ST上昇性心筋梗塞(NSTEMI)に対しての治療法として、早期にCAGおよび冠動脈再灌流治療を行う方法、ないしまずは内服治療を実施し、症状など必要に応じて侵襲的検査・治療を行う方法の2種類がある.
 Cochraneでは、5つのスタディ(7818名の患者)を利用し、intention-to-treat分析でランダム効果モデルを用い、95%信頼区間における相対リスクの推定要約が、全原因死、致死的あるいは非致死的心筋梗塞、または再発性狭心症を第一エンドポイントとして設定されているものとした.
 結論としては、初回入院中の死亡については侵襲的治療の方が危険(RR 1.59, 95%CI 0.96-2.64)である傾向があった.また侵襲的治療戦略は長期フォローアップでの死亡率を下げなかった.心筋梗塞の発症率については、6-12ヶ月(5トライアル)および3-5年(3トライアル)で侵襲的治療が有意な減少を示した(RR 0.73, 95%CI 0.62-0.86; and RR 0.67, 95%CI 0.67-0.92).さらに、早期および中期(4ヶ月未満および6-12ヶ月)の再発性狭心症はいずれも有意に侵襲的治療群で減少を示し(RR 0.47, 95% CI 0.32-0.68; and RR 0.67, 95% CI 0.55-0.83)、同時に早期および中期の再入院率も低下させた.侵襲的治療群では、周術期の心筋梗塞のRRを2倍に上昇させ、出血合併症のRRを1.7倍に上昇させたが、脳卒中のリスクは上げなかった.
 筆者の結論としては、UAP/NSTEMIの治療戦略は、保存的治療よりも侵襲的治療の方が、短期間における再発性狭心症および再入院率を減少させ、また長期間における心筋梗塞を減少させるものと考えられた.一方で侵襲的治療は手技に伴う心筋梗塞や出血リスクを上げることもわかる.以上のことより再発イベントのリスクの高い患者に限っては、侵襲的治療は有益かもしれない.