2016年7月12日火曜日

登山ログ

 残しておかないと、徐々に忘れちゃうよねということで、登山ログをつけておく.

2015年
8/21-23 三俣蓮華岳界隈(鷲羽岳、水晶岳、雲ノ平、黒部源流)
9/19-20 赤石岳(テント泊)
日程不明 大光山、愛鷹山など

2016年
6/11-12 鳳凰三山(テント泊)
7/02-03 甲斐駒ヶ岳(テント泊)
7/14 八ヶ岳(赤岳)(日帰り)
7/21-23 立山、剱岳(テント泊)
8/06-07 北岳、間ノ岳(小屋泊)
9月 槍ヶ岳、西穂高岳?

 振り返ってみると、月に2回ほどの山行なので、それほど多くは登っていないことがわかる.2016年は本格的にテント泊を始めている.テント泊は、テン場まで荷物を背負うことは大変ではあるけれど、だいたい山頂手前にテン場があるので、テント立てて荷物を置いておけば、身軽に山頂へ至れるため、それほど辛くはない.また、テント内はプライベートスペースなので、その中でシュラフの中に潜り込むのは最高だし、小屋に劣らない良さがある.

 今年も登れる限り、登りたい.

2016年6月30日木曜日

純粋.

 話の内容と全く別のところでのつっこみになるが・・・

 「週刊現代の三流記事を信じると、最悪死亡する場合もあります!!」(参照

 こんなタイトルのブログ記事を見かけた.内容は,どうでもいいんだけど・・・最後の方にある一言を興味深く読んだ.

例えば早期癌1つとっても、多くの早期癌は癌の目を出すまでに、10年ほどかかると言われています。
癌治療されて文句を言う人もいますが、果たして癌になる10年の間に自分の健康と真剣に向き合ってきたのでしょうか?。
自分を反省しないで、医療ばかりを批判する事ってどうなのでしょうか?。

「健康的な生活を送る」ことが,果たして「10年後のがん罹患」にどれほど寄与するのか,かなり疑問ではある.もうそんなことを純粋に信じられなくなった自分がいた.

2016年6月17日金曜日

村中璃子という人について

 Wedgeという雑誌でいろいろお書きになっている様です.
 恐らく自覚がないのだと思うし,臨床経験もなさそうなので患者とのコミュニケーションとかも念頭にないんだろうけど,ああいうワイドショー的記事を発信し続け,反ワクチン派を叩き続けることって,ワクチンに心配を抱く人たちの懸念をさらに深めるんですよね.

 様々な問題に対して,場当たり的,あるいは「これが正しい」というアプローチのみで話されるのではなく,患者側がどうしてワクチン不信に陥るのか,それをどう克服するかというアプローチが必要だと思う.この人には,自分の中の答えのみが正しい,っていうアイデアしかなさそうです.

 こうやって,ワクチンを推奨したい側と,ワクチンを信じられない患者との亀裂が深まっていくのは,困った話だなと思います.

2016年5月4日水曜日

GARMIN fēnix 3J HR を購入した

 自分はすでに GPS ウォッチの Suunto Ambit 3 Run HR を持っていた.これを購入したのは3年くらい前だったと思うが、その時の購入基準として、最低限のデザイン性と、心拍数計測ができることがあった.当時、ランニングを始めて2年くらいで、基本的には Nike の iPhone アプリでペース計測などを行っていた.当時、心拍数の計測がトレーニングに役立つらしいということは聞いていたのだけれど、それ以上は大した知識もなく、なんとなくの物欲で GPS ウォッチを買うに至ったのだったように思う.大手で GPS ウォッチを出しているところは、 Suunto, GARMIN, EPSON あたりだったか.まだ Apple Watch は発売していなかったし、してたとしてもスポーツ向けではなかっただろう.完全にネット情報を頼りに選んだが、 GARMIN は有名っぽかったがデザイン性が酷いなと思った記憶がある. ForeAthlete® シリーズだったと思うが、ぺらぺらな感じが受け付けなかったな(スポーツするにはいいんだろうけど).それで、Suunto Ambit 3 の方がいいかなと思って、心拍ベルトつきのやつを購入した.心拍測定の原理は不明なのだけど、おそらく心電図と同じ原理で R-R 間隔を拾ってるようだ.GPS としても、心拍計としても問題無く、登山もやるので登山ルートの保存もできて大変楽しめる時計だった.安静時と運動時の心拍から、 VO2max を計算できるのも面白かった.ただ、どうも解像度が低めで表示がガタガタであったのと、GPS を使用するとバッテリの持ちが厳しいこと (公式では 15 時間 参照)が欠点といえば欠点だった.まあ、解像度については時計に求めるにしては若干酷とは思うし、必要十分を満たしてはいたと思う.バッテリについては、実は今回購入した fenix 3J HR もほぼ同等の約 16 時間(GPS モード、公式 参照)なのだけど、Suunto はモバイルバッテリでどういうわけか充電できなくて、山小屋とか電源の無いところで追加の充電がどうしてもできないのがネックだった(登りで使えても、帰りで電池切れになる).

 ともかく、今回の GARMIN の時計の売りは何と言っても「手首で心拍計測」機能でしょう.先に言っておくが、胸ベルトも全く問題は無いし、若干不快ではあってもつけてれば慣れるし、精度も問題無いし、電池交換もできるし、そもそもライフログなんてつけたって何のアウトカムにも繋がらなそう(一部の人には安静時心拍を監視したり、「スマートウォッチで痩せました!」みたいな雑誌の裏みたいなことを信奉している人もいるらしいが)だし、そんなにすごいモノじゃあないんだけれど、それでもいろんなデータが可視化されること自体が面白くて、ついつい確認してしまう時計である.高いオモチャである.

 とりあえず、走ったりしてみたが、GPS としての精度は Suunto より高いように見える(道路を横断したレベルまで補足して確認できる)し、高度計なんかも付いているので面白いし(前の Suunto のやつは、Ambit 3 Peak にすれば高度計つきみたいですが、自分は Run を購入したので高度計はなかった)、ベルト不要で心拍計測できるのは便利だし、Suunto より圧倒的に高精細画面だしで、所有欲は満たされるいいモノである.
 なお、心拍計は、いわゆる医療分野のパルスオキシメーターの原理と同じっぽい.となると、医療者はよくわかっているのだが、この方法による脈波の読み取りは、振動のノイズをかなり拾ってしまうわけだが、そのあたりはどうなっているんだろうか.実際走ってみたところでは、おそらく運動負荷にパラレルに脈拍数が上がっていることはわかるのだが、正確性についてはあまり検証できていない.おそらく使用には耐えるのだろうと思う(正確性は不十分かもしれない).
 それから、iOS アプリの GARMIN Connect を導入しておいて、 Bluetooth でペアリングしておけば、アプリの側を起動すれば勝手に同期をしてくれ、ワークアウトの内容を保存してくれるので、ネット環境がなくてもスマホがあればいいというのも便利ではある.必須の機能ではないが.

 ちなみに、充電問題に関しては、手元の ANKER のモバイルバッテリで問題なく充電できることを確認した.

 なお、 Amazon で購入すると8万ちょい.安くはないですね.米国では $ 599 らしいので、だいぶ高めの設定になっていることがわかる.

2016年4月29日金曜日

走る際の膝の痛みについて

 結論は、原理は不明だが、ザムストのJKバンドを利用すると症状が緩和される.根本的には大腿四頭筋群の筋トレが必要.バンドは効きますよ.


2016年4月17日日曜日

efficacy と effectiveness の違いについて

 時々見かけて,これら二つは結構意味が違うんだよな~と思うんだけど,他人に説明できるほどよくわかっていないなと思ったので,再度まとめてみようと思う.

 医学研究や,政策的な文脈で,efficacy と effectiveness の違いというのは意識された方が良いです.以下に,意味の違いを簡単にまとめます.

 まずは,辞書的にはどうなっているか.(参考 リーダーズ英和辞典)
efficacy 効力,効験,効きめ
effective ①効力のある,有効な;有力な,有能な;効果的な;強い印象を与える ②実際の,事実上の;<兵員などが>応戦体制にある
英英辞書では,こんな感じ.(参考 Oxford Dictionaries)
efficacy The ability to produce a desired or intended result
effectiveness The degree to which something is successful in producing a desired result; success

 どうも区別は難しい.日本語のネット検索ではあまり正確な話が載っていないので,英語から引いてみると以下のような参考資料が無料で確認できた.

Technical Reviews, No. 12.
Gartlehner G, Hansen RA, Nissman D, et al.
Rockville (MD): Agency for Healthcare Research and Quality (US); 2006 Apr.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK44024/

 それほど長くない適度な感じだけど,面倒なのでイントロダクションのところだけ.

 Clinicians and policymakers often distinguish between the efficacy and the effectiveness of an intervention. Efficacy trials (explanatory trials) determine whether an intervention produces the expected result under ideal circumstances. Effectiveness trials (pragmatic trials) measure the degree of beneficial effect under “real world” clinical settings. Hence, hypotheses and study designs of an effectiveness trial are formulated based on conditions of routine clinical practice and on outcomes essential for clinical decisions.

 介入のエフィカシーとエフェクティブネスを区別する.エフィカシー研究(説明的なトライアル)ではその介入が理想的な環境下で期待する結果が得られるかどうかを調べるものである.エフェクティブネス研究(プラグマティックなトライアル)では「実際の世界」での有益な効果の度合いを測定するものである.ゆえに,エフェクティブネス研究における仮説や研究デザインは,ルーチンの臨床プラクティスや臨床判断にとって不可欠なアウトカムに基づき生成される.

 つまりエフィカシーとエフェクティブネスの違いは,端的に言うと「理想環境での効果か,実際社会での効果か」の違いということになるでしょう.よく臨床スコアの研究なんかが発表されることがあるが,だいたいはまず,大学病院や基幹施設で,手技等の十分な指導を受けてから実施して,「これだけ予後が改善しました!」「これだけ検査が減らせました!」という結果を発表している.これはある意味,「理想環境」であって,それを広く一般市中病院に適応できるか(一般化できるか)については不明である.一般的な環境で調査をして明らかになるのがエフェクティブネスなのでしょう.

2016年4月16日土曜日

福島の甲状腺がんの動向についての話

 昨年の津田先生の論文は、非常に大きな物議を醸した点で有益であったと思うし、県・国が集めたデータをまともに集計・解析して、英語で世界に発信した点で重要だったと思う.データがあっても解析しない・国内のみにとどめておくということをしているのはよくないのでね.
 こうやって公にしたからこそいろんな批判・議論できる.主だった批判をメモ的にまとめておこう. 


  • 福島甲状腺がん罹患率50倍に関するレビュー(試論) - ビーストの日記(参照
  • Epidemiology誌の津田敏秀氏の甲状腺癌の論文について : EARLの医学ノート(参照
  • 「福島の甲状腺がん50倍」論文に専門家が騒がないわけ(上) : Global Energy Policy Research(参照

 だいたい批判の対象になっているのは、以下のようなものにまとめられるだろう.

  1. 甲状腺がんの潜伏期間が4年というのは妥当か.
  2. 「甲状腺がんが 30-50 倍」はスクリーニング効果ではないか.
  3. external comparison の対象として、「国がんの甲状腺がん罹患率」を用いているがそれは妥当か(発症とスクリーニングによる診断の違い).
  4. 甲状腺がん、特に乳頭がんは予後良好なのでスクリーニングすることが間違い.
 まず1. について.小児甲状腺がんを検討する際、教科書等に潜伏期間は明記されていないのが現状だけど、CDCでは以下のようなレビューを出して、甲状腺がんの潜伏期間について報告している("小児"甲状腺がんでないことに注意)(参照).
D. Thyroid Cancer
 For thyroid cancer, direct observations or estimates of latency for 9/11 agents (Latency Method 1) or other agents (Latency Method 3) are not available in the literature. Also, the Administrator was unable to find recommendations on minimum latency from other authoritative sources [Latency Method 2]. Therefore, the Administrator has decided to rely on estimates of minimum latency based on the statistical modeling of risk for associations between exposure to low-level ionizing radiation and thyroid cancer of 2.5 years [Latency Method 4B]. Therefore, based on the best available scientific evidence and following the methodology presented in this revised White Paper on Minimum Latency and Types or Categories of Cancer, the Administrator selected a minimum latency of 2.5 years for use in the evaluation of a case of thyroid cancer for certification in the WTC Health Program. For a cancer occurring in a person less than 20 years of age, see Section III,E.
 上記では、潜伏期間に関する直接的な報告がないため、統計的な推定による潜伏期間を計算し、最小の潜伏期間は 2.5 年としている.なお最後の方に「20 歳未満に関しては〜」というくだりがあるが、20 歳未満の小児がんについても後述してあるが甲状腺がんについての直接的な記述はない.
  潜伏期間が 4 年だというのは、確かに短すぎる印象を持つのは主観的には事実なのだけど、その「4 年」の比較対象がこの世に存在しなくて、CDC の推計は上のように発表されているので、その推計に対する批判をするのが合理的と思われる.この推計、どうやったのかよくわからないけれど.

 すなわち、「4 年であるという根拠もないんだが、4 年じゃないというのは一体何を根拠に言ってるの?」ということになる.剖検で 3 割以上に甲状腺がんがあったという報告があるらしいけど、小児の話ではないので無効でしょうから、意味のある批判になっていないと思う.

 2. について.これについても、比較がないのでどうしてそんなに批判できるのかよくわからないんだけど.韓国でのスクリーニングの報告(参照)は結構有名で、かつスクリーニングの意義を問う重要な報告でした.これを根拠に、スクリーニング効果を言っているに過ぎないのでは、という批判がある.また、韓国の報告ではスクリーニング対象がかなり低く(10% 台)、スクリーニングのカバー範囲が増えるとそれだけ、甲状腺がんと診断される率は上がるとのことで、福島のスクリーニングは 8 割前後のカバー範囲のため、韓国の報告(約 15 倍)よりはるかに高い 50 倍だって、スクリーニング効果の範囲内でしょうということ.

 これについてはその通りかなとも思う反面、わからないところもある.カバーが広がると incidence も上昇するということが観察されたらしいが、それがよくわからない.スクリーニング対象がほとんどランダム(つまり、甲状腺がんが多そうな人口を選んでいるわけではない)であれば、真の甲状腺がん罹患割合は不変のはずで、スクリーニング陽性割合も変化がないのじゃないかと思うんだけど、どうなんだろうか.

 あと、この文章って単なる(といっては失礼である.NEJM だから!)Perspective の一記事であるためか、年齢別のデータもないし、査読も入ってるのかよくわからないんだけど、それって議論の比較根拠としてどこまで有効なんでしょうかね.

 3. は当然ダメだと思うんだけどw このへんは津田先生もわかってやったんじゃないかと思う.というか、前述の韓国の例も、「15 倍」というのは、スクリーニング前 vs スクリーニング後なので、症状ありで検査して診断されたやつ vs 無症状でスクリーニングにより発見されたやつの比較になっています.そういう意味では同じ舞台で戦っているとも言えなくないな!それっていいのか、NEJM も許したからいいのかな・・・.

 韓国の発表は採用して、津田先生のだけは 3. について批判するっていうのは普通にダブルスタンダードでよくわからないなと思う.
 ちなみに上述の通り、韓国の報告は全年齢人口での話なので、今回の津田先生の発表は小児のみを対象としているから、同じ俎上には載せられないのは当然でしょう.甲状腺がんが最も多い年齢は 60 歳台以降ですしね(参照).

 あと余談ですが、「エコーの技術革新による過剰診断じゃないの」という話があるが、まあこれはやってみるとわかるんだけど、甲状腺エコーはかなり簡単な検査なので、5mm という大きさなら本当に余裕で見つけられると思う.確かに最近のエコーはめちゃくちゃきれいに見れるんだけど、それが生きるのは心エコーとか腸管エコーとかではなかろうか.現に、自分が勤めてる病院では20年以上前のエコーがあるけど、普通に腎臓とかきれいに見れますよ.まあ、エビデンスの話しているのになんでこういう当てずっぽうな批判が混じってるのかよくわからんけど.

 4. について.甲状腺がんは確かに予後良好らしい.頸部腫瘍の教科書では以下のように記述されている(以下、乳頭がんについて述べている 参考:Cummings Otolaryngology Sixth Edition).

Long-term follow-up is monitored with thyroglobulin levels, physical examinations, and ultrasound. The long-term prognosis is excellent, and survival rates are greater than 95%. However, children under 10 years of age have a higher risk of recurrence and mortality. Other risk factors for recurrence include positive family history of thyroid cancer, large tumors, and extracapsular invasion.
ちなみにこれは、小児の甲状腺がんの章での記述.大人に関しては
Most patients with papillary carcinoma do well regardless of treatment. 
一行目からこんな感じなので、ノリが違うことがわかる.まあそもそも、どんなに発育速度が遅くても、子供と大人では平均余命が当然違うわけで、「予後良好」の定義が違うんですよね.予後良好だから過剰診断だ、という批判は、小児に関しても言えるのかな?


 いろいろと議論をすることは、知見の整理になるし、興味深いことでもある.一方で我々医療従事者がこういう知見をどのように利用していくかということも考えたほうがよい.「放射線って子どもの甲状腺がんを増やすんじゃないの?」という疑問に立脚して、より安全な立ち振る舞いを考えたいというのが根本にある調査である.スクリーニング効果を放射線の効果だと混同して、危険を煽ることはよくないことなんだけど、でもオンゴーイングに起こっている健康問題について、「完璧な調査」はそもそも無理なんだと思う.また、研究仮説というのもそもそも「価値中立ではない」ことを理解しないといけない.批判ばかりをしていると、何かと中立であるべきと思ってしまうし、できれば中立なのがいいのかもしれないが、仮説を立てる段階で「放射線って甲状腺に悪いのでは?」と思わなきゃ始まらない研究だと思う.抗菌薬の適正利用、とか、人工呼吸器の正しい利用、とかいうのは、価値判断をしなくて済むので(どう考えても正しい話なので)、深く悩まなくて済むんだよなあ.

 津田先生の教室は、そもそもが水俣やカネミ油症などの公害などなどの疫学調査に端を発した教室で、医学会が「水俣の汚染と人々の健康被害の因果関係は定かではない」と言い続けたせいで、みすみす被害を増やしたという歴史に根ざした研究をやっているところです.当然、この教室が発表する研究は価値中立的ではないと思う.こういった価値観に関する議論は副次的だと思うので(すなわち、津田先生自身の考え方や発言の仕方を批判することは本質的でないと思うので)、そのへんは抜きに批判的吟味することが有益だと思いました.