先日、Yahoo! ニュースで以下のような記事が掲載されました.
救急車は有料化すべきか…搬送者ほぼ半数は軽症、緊急時の影響懸念(参照)
内容はガバガバなんですけど、産経ですからまあ・・・という感じです.
救急車を有料化すべきかどうかの前に、なぜ救急要請が増えているのか、その背景への考察が乏しく、実りのない議論になっています.救急要請増加の背景としては、ひとつに高齢化の進行による医療ニーズの単純な増加があるでしょうし、マルチプロブレムを抱える高齢者が臓器別に分断された医療を施されていて、それが破綻することによる医療供給体制の問題もあるでしょうし、人口の流動性が高まって、老老介護や施設介護などが常態化すること、あるいは核家族化が進むことなどの、家族像の変化の問題もあるでしょう.
帝京大のお医者さんがどういうトレーニングを積まれたのか知りませんが、恐らく長い間救急の初期診療などに関わりもしない人が「不適切利用が多いから有料化」なんて言っているわけで、現場感の乏しさ、医療者としての器の狭さに目を覆いたくなる内容です.一般市民、特に老老介護で体調も悪い時に「適切利用」を判断することなどできないでしょう.また、医学界が一般市民向けに十分な教育や相談窓口を提供してきたかというと、お粗末極まりないわけですから、自業自得の面もあるわけです.
対するNPO理事の方も、ご自身の体験として苦労されたのは理解できますが、不安だから無料にしましょうという発想で制度設計できるわけではありません.資源は希少ですから適切な利用を考えるわけです.また、憲法25条を救急車制度に直接引用するのはあまりに理論が飛躍しています.
自分はもはや、完全に医療従事者としてしか発言できませんが、それでも日々、診療をしていて患者・家族の「不安」がいかに大きいか推測はできます.(失礼な言い方になりますが)素人目線で考えることを忘れてはいけないと思います.また、日本の社会人として、少々の熱や風邪で会社を休めないというのは理解はすべきと思います.救急車や、時間外外来の不適切利用は、ただ「救急車を有料化」というような矮小化した問題提起にあてはめられるべきではありません.ましてや、患者・家族への批判となるべきではないと思います.できることはまだまだあると思います.
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