2016年2月19日金曜日

インフルエンザについての話題

インフルエンザウイルス感染症の流行シーズンとなりました.
今年は1月下旬からの流行で,例年より遅い流行となったようですが,医療機関には連日発熱を主訴に来院する患者がおられます.(参考

インフルエンザを疑った場合の適切な受診行動は以下です.


  1. 発熱(たいていは38度以上),頭痛,関節痛や筋肉痛などの全身症状が主体で,咳,痰などは主体となりにくいです.腹痛や下痢が出ることもありますが,胃腸炎ほどひどくないことが多いです.また,職場,学校,家族のインフルエンザ感染がある場合は,自分も罹っている可能性が高くなります.
  2. 上記の様に,典型的な症状+濃厚な感染者との接触があれば,臨床的に(症状のみで)診断することができます.
  3. インフルエンザの迅速検査は,鼻に綿棒を入れて鼻の奥の液を回収し,検査するものです.インフルエンザ迅速検査は,発熱して大体12時間以降にならないと陰性になる可能性が高くなります.発熱直後は迅速検査を実施しない医療機関も多いでしょう.
  4. このため,検査を希望する場合は12時間以上開けてから医療機関を受診することが望ましいです.
  5. インフルエンザの治療を希望する場合は,発症して24-48時間以内に投薬開始すればよいことになっていますので,「可能な限り早く受診する」必要はありません.上記の様に,検査で陰性となるタイミングでの受診はあまり得策ではないでしょう.
  6. インフルエンザは,治療薬なしでも治る病気です.抗インフルエンザ薬は,発熱期間を平均して約1日ほど短くする作用があると言われていますが,同時に副作用も良く報告されています(多いのが嘔気などの消化器症状).「1日解熱が早まることと,薬の副作用が起こる可能性」との比較が必要です.
  7. 受験生,自宅に乳児や高齢者など免疫の弱い人がいる場合,喘息,神経筋疾患,心臓病,その他考慮すべき既往がある場合は積極的な抗ウイルス薬の適応と考えられます.
  8. インフルエンザを最も効果的に予防できるのは,現時点ではインフルエンザワクチンです.

3 については,以下の様な調査が発表されており,12時間未満ではインフルエンザA型では感度 90%未満,B型では80%未満という数字です.12時間を越えれば,A型に関しては100%近い感度を得られます.(三田村敬子ら,ウイルス 第 56 巻 第1号,pp.109-116,2006)

6 について.様々な研究をまとめて評価する,"コクランライブラリー Cochrane Library"のまとめによると,以下の様な結論となっています.(小児の場合)(Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in children
Oseltamivir and zanamivir appear to have modest benefit in reducing duration of illness in children with influenza. ... Based on published trial data, oseltamivir reduces the incidence of acute otitis media in children aged one to five years but is associated with a significantly increased risk of vomiting. ... The benefit of oseltamivir and zanamivir in preventing the transmission of influenza in households is modest and based on weak evidence. ... However, the clinical efficacy of neuraminidase inhibitors in 'at risk' children is still uncertain. ...
オセルタミビルとザナミビルは,小児のインフルエンザにおいて,病気の期間を減少させる中等度の効果がありそうである.(中略) 出版されたデータによると,オセルタミビルは1-5歳までの小児の急性中耳炎を減少させた一方で,嘔吐のリスクを著明に増大させた.(中略) オセルタミビルとザナミビルの,家族内でのインフルエンザの伝播の予防については,弱い根拠に基づいた中等度の効果があると考えられた.(中略) ノイラミニダーゼ阻害薬の「リスクを持つ児」への効果は定かではない.

最後に,最も本質的ではありますが現代社会が実現できないこと.

  • インフルエンザは何もないところから起きることはありません.あなたがインフルエンザになると言うことは,「誰かから移された」ことを意味します.少々体調が悪くても学校や職場へ行くなどの行動が,インフルエンザを広げてしまう結果になりかねません.特に社会人は簡単に休めないことは事実ですが,移される側の身になって考える事も必要です.会社の偉い方,学校の先生方も,鼻汁,咳嗽,微熱,倦怠感などの感染徴候がある場合は,早めに休める環境を作って頂きたいと思います.
  • 学校の皆勤賞,会社の無理な出勤はやめた方が良いと思います.


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