ラテン語の「フィニス(finis)」には、よく知られているように、ふたつの意味がある。終わり、そして目的だ。(暫定的な)ありようがいつ終わるか見通しのつかない人間がは、目的をもって生きることができない。ふつうのありようの人間のように、未来を見すえて存在することができないのだ。そのため、内面生活はその構造からがらりと様変わりしてしまう。精神の崩壊現象が始まるのだ。これは、別の人生の諸相においてもすでにおなじみで、似たような心理的状況は、たとえば失業などでも起こりうる。失業者の場合もありようが暫定的になり、ある意味、未来や未来の目的を見すえて生きることができなくなるからだ。かつて、失業した鉱山労働者を心理学の立場から集団検診した結果、このゆがんだありようが時間感覚におよぼす影響をさらにくわしく調査しなければ、ということになったことがある。心理学では、この時間感覚を、「内的時間」あるいは「経験的時間」と呼ぶ。
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