2015年2月17日火曜日

ステント時代における不安定狭心症/非ST上昇性心筋梗塞に対する早期侵襲的治療と保存的戦略の比較

Early invasive versus conservative strategies for unstable angina and non-ST elevation myocardial infarction in the stent era.
Cochrane Database Syst Rev.2010 Mar 17;(3):CD004815. doi: 10.1002/14651858.CD004815.pub3.
 不安定狭心症(UAP)および非ST上昇性心筋梗塞(NSTEMI)に対しての治療法として、早期にCAGおよび冠動脈再灌流治療を行う方法、ないしまずは内服治療を実施し、症状など必要に応じて侵襲的検査・治療を行う方法の2種類がある.
 Cochraneでは、5つのスタディ(7818名の患者)を利用し、intention-to-treat分析でランダム効果モデルを用い、95%信頼区間における相対リスクの推定要約が、全原因死、致死的あるいは非致死的心筋梗塞、または再発性狭心症を第一エンドポイントとして設定されているものとした.
 結論としては、初回入院中の死亡については侵襲的治療の方が危険(RR 1.59, 95%CI 0.96-2.64)である傾向があった.また侵襲的治療戦略は長期フォローアップでの死亡率を下げなかった.心筋梗塞の発症率については、6-12ヶ月(5トライアル)および3-5年(3トライアル)で侵襲的治療が有意な減少を示した(RR 0.73, 95%CI 0.62-0.86; and RR 0.67, 95%CI 0.67-0.92).さらに、早期および中期(4ヶ月未満および6-12ヶ月)の再発性狭心症はいずれも有意に侵襲的治療群で減少を示し(RR 0.47, 95% CI 0.32-0.68; and RR 0.67, 95% CI 0.55-0.83)、同時に早期および中期の再入院率も低下させた.侵襲的治療群では、周術期の心筋梗塞のRRを2倍に上昇させ、出血合併症のRRを1.7倍に上昇させたが、脳卒中のリスクは上げなかった.
 筆者の結論としては、UAP/NSTEMIの治療戦略は、保存的治療よりも侵襲的治療の方が、短期間における再発性狭心症および再入院率を減少させ、また長期間における心筋梗塞を減少させるものと考えられた.一方で侵襲的治療は手技に伴う心筋梗塞や出血リスクを上げることもわかる.以上のことより再発イベントのリスクの高い患者に限っては、侵襲的治療は有益かもしれない.

2015年2月8日日曜日

腕時計を趣味に

 社会人になって、しばらくは学生の頃から使っていたSKAGENを使っていたんですが、電池の消耗からか1日で数分遅れるようになって、買い替えをしたりしていたら、腕時計をジロジロ見るような人間になってしまいました・・・

 今回、ひとつご紹介したいのが、"SUUNT AMBIT 3"というスポーツウォッチ.いきなり普通の腕時計ではないんだが、気に入って使っているので.
 ランニングも好んでやっているのだけれど、ランニング中に着けられる時計はないかなと思って考えていたところ、この時計が目に留まりました.ランニング中というのは、携行品が少ない状態なので、ひとつひとつが目立つわけです.ゆえに、見た目に良いものを選びたいなと思っていたんだけど、GARMINなどもよく選ばれるようですが、見た目の良さでSUUNTにしました.
 使用感はというと、GPSは優秀で、iPhone NIKE+のアプリのGPSと大差ない計測誤差でデータをPCに移行させて専用ソフト Movescount で見れば、ペース配分、ケイデンスなどを含めた詳細情報が確認できてランニング後も楽しめる仕様になっている.
HRベルト(心拍ベルト)を使うともっとデータは多い.
無駄にワクワクするんだよねこういうの.
マップを表示したりできるらしいけど、スマフォがある状況でわざわざこういう機能は使わない.デジタルコンパスも便利なんだろうけど現時点では使用せず.
 電池持ちは、やはりGPSを使用しているとかなりの消費量になる.2時間程度走って20%強は消費される.これは競合他社に比較するとまずまずのパフォーマンスなんだろうけど、普通の時計として考えると「週に何回も充電する」というのは違和感はある.ま、普段使いの時計というわけではないんだろうけど.
 あと、普通に使ってて違和感があるのは、ベルトがポリウレタンの弾性のある柔らかい素材で、本体部分がやや重いものだから普通に置くと画面を下にして転がってしまうところ.横置きすればいいんだけど、時計を縦に置く癖があるのでいつも落ち着きどころがなくて気になってしまう(文章じゃ伝わりにくいけれど).
 そのほかにも、余計?な機能として普段の生活のactivity度合いや消費カロリーを表示してくれるのは、スポーツのみならず普段の生活に運動を取り入れるのに良い感じ.
 ランニング後に、「休息時間」が表示されるけど、おそらく負荷によって一定数の休息時間を表示するだけであまり意味はなさそう.まーそれだけ休めば確かに大丈夫でしょう、っていうくらいの数字が表示されますが.

 見た目もよく、スポーツを楽しく、可視化してくれる時計です.5万前後でまずまずのお値段.ランナー的には、ありだと思います.

あと少し

 世の中は医師国家試験だ.自分が受験したのは2年前.遠足気分だったことだけは思い出せるけれど、試験の内容についてはほとんど覚えていない・・・.振り返ればまさに遠足という感じで、楽しかったような印象があるんだけれど、実際受けてる時は生きた心地がしないんだよね.受験生の皆さん、どうか頑張って.
 自分はお金がなかったので、卒業旅行は最小限で、国内旅行を数日しただけで、国試後の1ヶ月ほどはほとんど読書して過ごしたものだった.卒業旅行のことを研修先の病院で聞かれたらやだなーとか思っていた.

 あっという間に、初期研修もラスト2ヶ月.当直回数は・・・あと10回程度?このドギツイ当直もあと数回と思うと、寂しくもあり、やっとここまで来たか、という感もあり.最後まで、サバイブしたい.

2014年11月24日月曜日

ランニング継続中

 ランニング再開したら楽しくて、結構長距離を走っている.11月は合計12回走って、130kmを走破したらしい.当直のことを考えると、アフターファイブはほとんど走っている計算になるのでなかなかの気合の入りようだった.
 一方で、もともと非力なので膝が弱いけれど、今回は右膝関節の内側の、恐らく大腿四頭筋群の付着部=鵞足の炎症と思われる.そこまで痛くはないが、全然引かない感じ.筋トレと柔軟が必要.少しずつ、とりいれている.

 もう年末である.

2014年10月30日木曜日

ランニングを趣味に.

 数日前より年休を取っているんだけど、時間があるので久々に走った.10km走るのもきつくて、先月までちょこっと走っていたけどやはり体力の低下がありそう.もともと運動系ではないので基礎的な体力ないし筋力に乏しいこともあって、いきなり長距離を走り直すのは厳しい印象だった.

 国家試験の勉強中から片手間で始めたランニングだけど、意外にその面白さを感じてて、三日坊主にはならずにすんだ.今改めて走ったのは、半分はその楽しさ目当て、半分は「社会的にもっともらしい趣味を持ちたい」というところ.趣味がないわけじゃないが、料理といっても変な印象をしばしばもたれるし、漫画、アニメの類は社会受けしないし、勉強といっても引かれるしといった感じでやはりスポーツは受けも良く極めて社会的.とはいえ集団競技を真面目にやるような気分にもなれないし、やっぱり一人で打ち込めるものがよくて、走ったり山に登ったりというのが自分にとっては向いている気がする.登山に関しては、先日のこと(参照)があってから、一人登山は危険だなあと思っているけれど.

 というわけで、ちゃんとランニングを始めようと思う.できれば、30歳までにフルマラソンを走りたい.湘南で走りたかったが、あんまりうまくいかなかった.
 とりあえず、以下の本を参照して細く長くトレーニングしていこうと思う.

  • 速くなる体幹トレーニングBCT―走りが変わる!記録が伸びる! (Amazon
  • eA式 マラソン走力UPトレーニング (Amazon
 時間も体力も限られているので、めげずにやることが大事だろう.

 ちなみに上記の体幹トレーニングというのをやってみたが、これは訓練していない人にとってはかなりきつかった.

2014年10月1日水曜日

長期間作用の避妊法が10代への第一選択として推奨 -AAP

元ネタはこちら.
Long-Acting Contraceptives Recommended as First Choice for Teens (参照
 米国小児科学会からのステートメントで、10代への避妊法については、長期間作用で、再度妊娠可能な避妊法、すなわちプロゲスチン埋め込みや子宮内避妊器具(IUD)が第一選択として推奨される、とのことである.機関誌であるPediatricsに掲載されている.


  • メドロキシプロゲステロンのデポ剤や、避妊パッチは「特に効果的」で「妊娠に比べて遙かに安全」であり、ゆえに10代に対して使用可能とされるべきである.(薬剤の骨への影響や、パッチの静脈血栓症との関連などにも言及あり)
  • 小児科医は、避妊薬(避妊具)を処方したり、IUDの使用を患者に打診する際、必ずしも内診が必要ではないことを知っておくべきである.
  • 小児医療に関わる者は、思春期の患者と避妊法の選択について、成長発達にとって適切で、個々人に応じた方法で、十分な時間をもって対応すべきである.


 「妊娠するよりはマシ」という考え方に基づき、IUDやインプラントタイプのホルモン製剤を推奨しているということで、見方によっては露骨な方針だなあと思う.「貞操を守れ」と言うのはもはや時代遅れで、青少年をそうやって啓蒙主義的に導いていくのはほとんど不可能で、むしろおおっぴらにコンドームを推奨したり、ピルを勧めてみたりするようになったわけであるが、やはりコンプライアンスの問題があるんだろうと思う.コトの度に用意したり、ピルをきっちりサイクル通りに飲んだりできる思春期カップルというのは少ないのだろう.一方、若年の妊娠というのは大きな問題で、母体への負担はもちろん、こどもの成育にも多大な苦労がある.一般診療上あまり目にはしないけれど、それでも時々10代の妊娠があり、一般病院でも遭遇する.皮下への埋め込み型のホルモン製剤は、簡単に行うことができるし毎回の用意も不要だしで、効果は高いんだろう.
 こういった方法もいいんだけれど、性感染症予防にはやはりコンドームに併用することが望ましいんだと思う.可能な限り両方を勧めるべきだろう

2014年9月12日金曜日

インフルエンザウイルスワクチンの妊娠女性への接種とその胎児への影響

Influenza Vaccination of Pregnant Women and Protection of Their Infants
N Engl J Med 2014; 371:918-931
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1401480


要旨
 健康な妊娠女性、あるいはHIV感染症をもつ妊娠女性、そしてその児へのインフルエンザウイルスワクチンの有効性については、限られたデータしかない.3価不活化インフルエンザワクチン(IIV3)の南アフリカでの2つの二重盲検化ランダム化プラセボ対照試験を計画した.2011年にHIV感染妊婦を、2011年と2012年にHIV未感染妊婦を、それぞれ対象に調査した.妊婦およびその新生児(生後24週まで)の、IIV3の免疫原性、安全性および有効性について検討した.免疫反応は赤血球凝集反応阻害測定(HAI assay)で測定し、インフルエンザは呼吸器検体へのRT-PCRで診断した.2116人のHIV未感染妊婦と、194人のHIV感染妊婦がコホートとして組み込まれた.ワクチン接種の1ヶ月後、セロコンバージョン率とHAIタイターが1:40を越えたものの割合は、いずれのコホートでもIIV3接種の方が高かった.RT-PCRで診断されたインフルエンザ発症患者は、HIV陰性のプラセボ群では妊婦、新生児ともに3.6%であり、HIV陰性のIIV3接種群では妊婦、新生児それぞれで1.8%と1.9%であり、それぞれにおけるワクチン有効性は50.4%(95%CI, 14.5-71.2)と48.8%(95%CI, 11.6-70.4)であった.また、HIV陽性妊婦での発症率は、プラセボ群では17.0%、IIV3接種群では7.0%であり、ワクチン有効性は57.7%(95%CI, 0.2-82.1)であった.以上のことより、インフルエンザワクチンはHIV陰性/陽性妊婦において免疫原性を持ち、両群の妊婦およびHIV陰性群の新生児において、部分的な感染予防効果があることが示された.


 ワクチン含め、クスリのエビデンスというのは結構面倒で、大規模なRCTにはお金も人手も手間もかかるのでどうしても(その薬の製造元の)製薬会社の出資になりやすい.当然利害関係にあるからバイアスの原因となるので解釈が困難となる.
 今回は、インフルエンザワクチンの話ではあるが、出資元はthe Bill and Melinda Gates Foundationで、一応民間団体ではある.一方で、南アフリカでのトライアルであるところはいろいろと勘ぐらざるを得ず、どういった解釈が適切なのかはわからない.
 インフルエンザワクチンのエビデンスについては、結構賛否両論でCochrane Libraryでも製薬会社主体の研究であることに対して警告されていたようだったが、最近ではエビデンスが増えたのだろうか、そのような記載が削除されているようだった.
(Vaccines for preventing influenza in healthy adults  http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD001269.pub5/abstract たとえばこのレビューでは警告文がなさそうであるが、2010年の段階ではかなり大きく警告があった.)

 今回のエビデンスは妊婦に対するRCTで、新生児に対しても検討している.インパクトとしては大きいだろうがvalidityについてはどうなんだろう.