ランニング再開したら楽しくて、結構長距離を走っている.11月は合計12回走って、130kmを走破したらしい.当直のことを考えると、アフターファイブはほとんど走っている計算になるのでなかなかの気合の入りようだった.
一方で、もともと非力なので膝が弱いけれど、今回は右膝関節の内側の、恐らく大腿四頭筋群の付着部=鵞足の炎症と思われる.そこまで痛くはないが、全然引かない感じ.筋トレと柔軟が必要.少しずつ、とりいれている.
もう年末である.
2014年11月24日月曜日
2014年10月30日木曜日
ランニングを趣味に.
数日前より年休を取っているんだけど、時間があるので久々に走った.10km走るのもきつくて、先月までちょこっと走っていたけどやはり体力の低下がありそう.もともと運動系ではないので基礎的な体力ないし筋力に乏しいこともあって、いきなり長距離を走り直すのは厳しい印象だった.
国家試験の勉強中から片手間で始めたランニングだけど、意外にその面白さを感じてて、三日坊主にはならずにすんだ.今改めて走ったのは、半分はその楽しさ目当て、半分は「社会的にもっともらしい趣味を持ちたい」というところ.趣味がないわけじゃないが、料理といっても変な印象をしばしばもたれるし、漫画、アニメの類は社会受けしないし、勉強といっても引かれるしといった感じでやはりスポーツは受けも良く極めて社会的.とはいえ集団競技を真面目にやるような気分にもなれないし、やっぱり一人で打ち込めるものがよくて、走ったり山に登ったりというのが自分にとっては向いている気がする.登山に関しては、先日のこと(参照)があってから、一人登山は危険だなあと思っているけれど.
というわけで、ちゃんとランニングを始めようと思う.できれば、30歳までにフルマラソンを走りたい.湘南で走りたかったが、あんまりうまくいかなかった.
2014年10月1日水曜日
長期間作用の避妊法が10代への第一選択として推奨 -AAP
元ネタはこちら.
Long-Acting Contraceptives Recommended as First Choice for Teens (参照)
米国小児科学会からのステートメントで、10代への避妊法については、長期間作用で、再度妊娠可能な避妊法、すなわちプロゲスチン埋め込みや子宮内避妊器具(IUD)が第一選択として推奨される、とのことである.機関誌であるPediatricsに掲載されている.
- メドロキシプロゲステロンのデポ剤や、避妊パッチは「特に効果的」で「妊娠に比べて遙かに安全」であり、ゆえに10代に対して使用可能とされるべきである.(薬剤の骨への影響や、パッチの静脈血栓症との関連などにも言及あり)
- 小児科医は、避妊薬(避妊具)を処方したり、IUDの使用を患者に打診する際、必ずしも内診が必要ではないことを知っておくべきである.
- 小児医療に関わる者は、思春期の患者と避妊法の選択について、成長発達にとって適切で、個々人に応じた方法で、十分な時間をもって対応すべきである.
「妊娠するよりはマシ」という考え方に基づき、IUDやインプラントタイプのホルモン製剤を推奨しているということで、見方によっては露骨な方針だなあと思う.「貞操を守れ」と言うのはもはや時代遅れで、青少年をそうやって啓蒙主義的に導いていくのはほとんど不可能で、むしろおおっぴらにコンドームを推奨したり、ピルを勧めてみたりするようになったわけであるが、やはりコンプライアンスの問題があるんだろうと思う.コトの度に用意したり、ピルをきっちりサイクル通りに飲んだりできる思春期カップルというのは少ないのだろう.一方、若年の妊娠というのは大きな問題で、母体への負担はもちろん、こどもの成育にも多大な苦労がある.一般診療上あまり目にはしないけれど、それでも時々10代の妊娠があり、一般病院でも遭遇する.皮下への埋め込み型のホルモン製剤は、簡単に行うことができるし毎回の用意も不要だしで、効果は高いんだろう.
こういった方法もいいんだけれど、性感染症予防にはやはりコンドームに併用することが望ましいんだと思う.可能な限り両方を勧めるべきだろう.
2014年9月12日金曜日
インフルエンザウイルスワクチンの妊娠女性への接種とその胎児への影響
Influenza Vaccination of Pregnant Women and Protection of Their Infants
N Engl J Med 2014; 371:918-931
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1401480
N Engl J Med 2014; 371:918-931
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1401480
要旨
健康な妊娠女性、あるいはHIV感染症をもつ妊娠女性、そしてその児へのインフルエンザウイルスワクチンの有効性については、限られたデータしかない.3価不活化インフルエンザワクチン(IIV3)の南アフリカでの2つの二重盲検化ランダム化プラセボ対照試験を計画した.2011年にHIV感染妊婦を、2011年と2012年にHIV未感染妊婦を、それぞれ対象に調査した.妊婦およびその新生児(生後24週まで)の、IIV3の免疫原性、安全性および有効性について検討した.免疫反応は赤血球凝集反応阻害測定(HAI assay)で測定し、インフルエンザは呼吸器検体へのRT-PCRで診断した.2116人のHIV未感染妊婦と、194人のHIV感染妊婦がコホートとして組み込まれた.ワクチン接種の1ヶ月後、セロコンバージョン率とHAIタイターが1:40を越えたものの割合は、いずれのコホートでもIIV3接種の方が高かった.RT-PCRで診断されたインフルエンザ発症患者は、HIV陰性のプラセボ群では妊婦、新生児ともに3.6%であり、HIV陰性のIIV3接種群では妊婦、新生児それぞれで1.8%と1.9%であり、それぞれにおけるワクチン有効性は50.4%(95%CI, 14.5-71.2)と48.8%(95%CI, 11.6-70.4)であった.また、HIV陽性妊婦での発症率は、プラセボ群では17.0%、IIV3接種群では7.0%であり、ワクチン有効性は57.7%(95%CI, 0.2-82.1)であった.以上のことより、インフルエンザワクチンはHIV陰性/陽性妊婦において免疫原性を持ち、両群の妊婦およびHIV陰性群の新生児において、部分的な感染予防効果があることが示された.
ワクチン含め、クスリのエビデンスというのは結構面倒で、大規模なRCTにはお金も人手も手間もかかるのでどうしても(その薬の製造元の)製薬会社の出資になりやすい.当然利害関係にあるからバイアスの原因となるので解釈が困難となる.
今回は、インフルエンザワクチンの話ではあるが、出資元はthe Bill and Melinda Gates Foundationで、一応民間団体ではある.一方で、南アフリカでのトライアルであるところはいろいろと勘ぐらざるを得ず、どういった解釈が適切なのかはわからない.
インフルエンザワクチンのエビデンスについては、結構賛否両論でCochrane Libraryでも製薬会社主体の研究であることに対して警告されていたようだったが、最近ではエビデンスが増えたのだろうか、そのような記載が削除されているようだった.
(Vaccines for preventing influenza in healthy adults http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD001269.pub5/abstract たとえばこのレビューでは警告文がなさそうであるが、2010年の段階ではかなり大きく警告があった.)
今回のエビデンスは妊婦に対するRCTで、新生児に対しても検討している.インパクトとしては大きいだろうがvalidityについてはどうなんだろう.
2014年8月31日日曜日
地域医療研修.
8月より、山形県での地域医療研修期間である.2ヶ月の間、内科一般の医者として地域医療にあたる.アクティブな医者(?)が少ない分、ゆだねられることは多く、擬似的な独り立ちの様相を呈するところである.実際のところは慢性期病院に近い部分が多大にあって、そこまで忙しくはないのだけれど.
そんな山形で、いわば派遣的な医者としてやっていて、地域医療に関して思うところはいろいろあった.
まず、その地域に定住しない者として働くということは、どうしても「その場さえしのげればいい」と考えやすくなる.いわば、「医療に心がこもらない」.これは、初期研修あるいは後期研修も同様なのかもしれないけれど、責任ある立場でないからか、単純に労働場所が変わりうるからかわからないけれど、面倒なケースではやっぱりこういう精神性に抗いきれなくなることがあると思う.生活習慣病などの外来では継続的な介入が望まれるわけで、患者は(内心どう思っているかは別として)ちゃんと外来に通っているわけである.生活上の指導が治療の基本になるわけだけれど、適当に薬だけ処方して終えるというのが一番楽で、えてしてそういう外来になりがちだと思う.この仕事は「責任感」にドライブされて動くことが多くて、逆にその責任感に乏しい状況になったとき、医療の質を維持するのは一気に難しくなると思う.
地域医療というのは、このような派遣医師、非常勤医師に支えられているのが現状で、その医療の質がどこまで担保されているのかは、よくわからない.もしかしたらひどいのかもしれないし、勘違いなのかもしれないし、医療の質なんて患者の予後には関係ないのかもしれない.「親に同じことができるか」というのは、駆け出しの医者への叱咤激励として言われるけれど、実際自信がなかったりする.
それと、これは体感でしかないんだけど、田舎は喫煙率高そうな感じがする.同僚が看護師という職業だからかもしれないが、10人くらいで行った飲み会で、一緒に行った看護師全員が喫煙者でカラオケ始めたときは、本当に苦しかった.
そんなこんなで地域医療ではいろいろ発見、思うところがある.楽しくやっていきたい.
そんな山形で、いわば派遣的な医者としてやっていて、地域医療に関して思うところはいろいろあった.
まず、その地域に定住しない者として働くということは、どうしても「その場さえしのげればいい」と考えやすくなる.いわば、「医療に心がこもらない」.これは、初期研修あるいは後期研修も同様なのかもしれないけれど、責任ある立場でないからか、単純に労働場所が変わりうるからかわからないけれど、面倒なケースではやっぱりこういう精神性に抗いきれなくなることがあると思う.生活習慣病などの外来では継続的な介入が望まれるわけで、患者は(内心どう思っているかは別として)ちゃんと外来に通っているわけである.生活上の指導が治療の基本になるわけだけれど、適当に薬だけ処方して終えるというのが一番楽で、えてしてそういう外来になりがちだと思う.この仕事は「責任感」にドライブされて動くことが多くて、逆にその責任感に乏しい状況になったとき、医療の質を維持するのは一気に難しくなると思う.
地域医療というのは、このような派遣医師、非常勤医師に支えられているのが現状で、その医療の質がどこまで担保されているのかは、よくわからない.もしかしたらひどいのかもしれないし、勘違いなのかもしれないし、医療の質なんて患者の予後には関係ないのかもしれない.「親に同じことができるか」というのは、駆け出しの医者への叱咤激励として言われるけれど、実際自信がなかったりする.
それと、これは体感でしかないんだけど、田舎は喫煙率高そうな感じがする.同僚が看護師という職業だからかもしれないが、10人くらいで行った飲み会で、一緒に行った看護師全員が喫煙者でカラオケ始めたときは、本当に苦しかった.
そんなこんなで地域医療ではいろいろ発見、思うところがある.楽しくやっていきたい.
レボフロキサシン使用後5年間での筋骨格系への悪影響の評価
Assessment of Musculoskeletal Toxicity 5 Years After Therapy With Levofloxacin
Pediatrics Vol. 134 No. 1 July 1, 2014 pp. e146 -e153
http://pediatrics.aappublications.org/content/134/1/e146.abstract
要旨
ニューキノロン系抗菌薬は、投与量や投与期間に依存して荷重関節の軟骨障害を引き起こしたという動物実験により、その安全性への関心があった.急性中耳炎と市中肺炎に対するレボフロキサシンと比較薬との比較で、軟骨障害の有無により5年間フォローされ評価されたランダム化前向き比較試験が計画された.研究に参入された児はまず、筋骨格系副反応(MSAE)に着目した1年間の安全性評価に組み入れられる.MSAEやプロトコルで規定した筋骨格系疾患が残存する児については、追加的な4年間のフォローを受ける.
2233人の児が12か月のフォローアップを受け、1340人中124人(9%)のレボフロキサシン群と、893人中83人(9%)の比較薬群が5年間の治療後評価を受けた.治療後2-5年後までのMSAEを認めた児については、薬剤治療の"関与があり得る"とされたものは両群で同数であり、レボフロキサシン群では1340人中1人、比較薬群では893人中1人であった.
結論は、レボフロキサシンまたは比較薬で治療された児で、5年間のうちにMRSEを呈したものは臨床的に検知可能な差異はなく、レボフロキサシンによる軟骨障害の5年間でのリスクは稀であるか、または可逆的なものであると考えられる.
小児におけるニューキノロン系抗菌薬の位置づけは、基本的に禁忌とされている(イヌに対する投与実験で軟骨障害を認めた).しかし、2009年に発表されたトスフロキサシン(商品名オゼックス/大正富山)は、小児用顆粒製剤として、小児に適応のある国内はじめてのニューキノロン系抗菌薬として注目された.適応は、肺炎、中耳炎、コレラ、炭疽菌感染症とされている.特に呼吸器感染に対するトスフロキサシンの処方は小児領域では一般化しているように思う.
正直なところ、たかが動物実験で適応がないのはどうなのよ、と思うところであったが副作用の検証というのはたぶんいろんな意味で困難なんだろうと思う.5年という比較的長期のフォローで筋骨格系副作用の評価を行ったこのたびの研究は、それなりの意義はあったと思うが、「やっぱそうだよね」の感とで迎えられたのじゃないかと思う.エビデンスと、社会的なポリシーのすりあわせというのはたぶんいつの時代も問題になるんだろう.
Pediatrics Vol. 134 No. 1 July 1, 2014 pp. e146 -e153
http://pediatrics.aappublications.org/content/134/1/e146.abstract
要旨
ニューキノロン系抗菌薬は、投与量や投与期間に依存して荷重関節の軟骨障害を引き起こしたという動物実験により、その安全性への関心があった.急性中耳炎と市中肺炎に対するレボフロキサシンと比較薬との比較で、軟骨障害の有無により5年間フォローされ評価されたランダム化前向き比較試験が計画された.研究に参入された児はまず、筋骨格系副反応(MSAE)に着目した1年間の安全性評価に組み入れられる.MSAEやプロトコルで規定した筋骨格系疾患が残存する児については、追加的な4年間のフォローを受ける.
2233人の児が12か月のフォローアップを受け、1340人中124人(9%)のレボフロキサシン群と、893人中83人(9%)の比較薬群が5年間の治療後評価を受けた.治療後2-5年後までのMSAEを認めた児については、薬剤治療の"関与があり得る"とされたものは両群で同数であり、レボフロキサシン群では1340人中1人、比較薬群では893人中1人であった.
結論は、レボフロキサシンまたは比較薬で治療された児で、5年間のうちにMRSEを呈したものは臨床的に検知可能な差異はなく、レボフロキサシンによる軟骨障害の5年間でのリスクは稀であるか、または可逆的なものであると考えられる.
小児におけるニューキノロン系抗菌薬の位置づけは、基本的に禁忌とされている(イヌに対する投与実験で軟骨障害を認めた).しかし、2009年に発表されたトスフロキサシン(商品名オゼックス/大正富山)は、小児用顆粒製剤として、小児に適応のある国内はじめてのニューキノロン系抗菌薬として注目された.適応は、肺炎、中耳炎、コレラ、炭疽菌感染症とされている.特に呼吸器感染に対するトスフロキサシンの処方は小児領域では一般化しているように思う.
正直なところ、たかが動物実験で適応がないのはどうなのよ、と思うところであったが副作用の検証というのはたぶんいろんな意味で困難なんだろうと思う.5年という比較的長期のフォローで筋骨格系副作用の評価を行ったこのたびの研究は、それなりの意義はあったと思うが、「やっぱそうだよね」の感とで迎えられたのじゃないかと思う.エビデンスと、社会的なポリシーのすりあわせというのはたぶんいつの時代も問題になるんだろう.
2014年8月1日金曜日
進路決定.
先日書いた、後期研修病院の選考だけど、無事に志望した病院に内定をもらい、つい昨日その文書の提出を行った.これで今の初期研修を終えることができれば、後期の3年分の食い扶持はキープされた訳だ.とりあえず、結構全うな小児病院で働けそうなことを楽しみに思う.
現在、研修は志望科である小児科ローテ中.当科の部長が、正確にはクセがあるもののとても切れる人で、自分の師匠の一人である.その人と、自院の来し方行く末について話し合ったので、少し記録しておこうと思う.
昨今、どこの病院も特色を出そうとして「○×センター」などと銘打って、有名な医師やスタッフを配し、設備を整えて広告塔のようにするケースが少なくない.自院も、経営陣の思惑に沿って、このようなセンター化が著しい.しかし、センター化の行く末はどうやっても「寄せ集め」にしか過ぎなくて、それぞれで専門的な医療はできるんだけど、総合病院としてやっていこうとすると、それぞれのセンターを「十分多く、十分多様に」取りそろえる必要に迫られる.そうやって専門の寄せ集めをすると、大勢の医師を要するし、科間の連携も失われるというわけ.イメージとしては大学病院のような場所になってしまう.
病院運営上、すべての科の土台となる科は、内科・外科・救急科+小児科・産婦人科だ、と考えられる.これに追加していく形で各専門がより深い診療を行うものである.なぜなら、心臓カテーテル治療をした人も、間質性肺炎で免疫抑制薬を使用する人も、神経難病で専門加療を受けている人も、おなかが痛くなったり、息が苦しくなったりすれば、内科・外科・救急科を受診することになるからである.常にかかりつけ医・専門医が診察するわけではない(それはリソースの無駄遣いである).そういうわけで、専門科が多くの患者を抱えればそれだけ、急変や強い自覚症状を覚えたとき、まず受診するのは上記のような5つの科なのである.それが、病院全体の体力であり、十分にその緊急事態に対応できなければ、もとの科も存続できないのである.
初期研修のエッセンスも、これなんだと思った.医師として、診療の体力となるのはこれらの科に対する知識・経験であって、専門特化がすべてではないのだ.
専門にこもるのは簡単である.目の前でおなかが痛くなった人に、手をさしのべてあげられるかどうかである.
現在、研修は志望科である小児科ローテ中.当科の部長が、正確にはクセがあるもののとても切れる人で、自分の師匠の一人である.その人と、自院の来し方行く末について話し合ったので、少し記録しておこうと思う.
昨今、どこの病院も特色を出そうとして「○×センター」などと銘打って、有名な医師やスタッフを配し、設備を整えて広告塔のようにするケースが少なくない.自院も、経営陣の思惑に沿って、このようなセンター化が著しい.しかし、センター化の行く末はどうやっても「寄せ集め」にしか過ぎなくて、それぞれで専門的な医療はできるんだけど、総合病院としてやっていこうとすると、それぞれのセンターを「十分多く、十分多様に」取りそろえる必要に迫られる.そうやって専門の寄せ集めをすると、大勢の医師を要するし、科間の連携も失われるというわけ.イメージとしては大学病院のような場所になってしまう.
病院運営上、すべての科の土台となる科は、内科・外科・救急科+小児科・産婦人科だ、と考えられる.これに追加していく形で各専門がより深い診療を行うものである.なぜなら、心臓カテーテル治療をした人も、間質性肺炎で免疫抑制薬を使用する人も、神経難病で専門加療を受けている人も、おなかが痛くなったり、息が苦しくなったりすれば、内科・外科・救急科を受診することになるからである.常にかかりつけ医・専門医が診察するわけではない(それはリソースの無駄遣いである).そういうわけで、専門科が多くの患者を抱えればそれだけ、急変や強い自覚症状を覚えたとき、まず受診するのは上記のような5つの科なのである.それが、病院全体の体力であり、十分にその緊急事態に対応できなければ、もとの科も存続できないのである.
初期研修のエッセンスも、これなんだと思った.医師として、診療の体力となるのはこれらの科に対する知識・経験であって、専門特化がすべてではないのだ.
専門にこもるのは簡単である.目の前でおなかが痛くなった人に、手をさしのべてあげられるかどうかである.
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