107回国試は終わりました。
結局、経過報告を前日と1日目の2つしかしなかったけれど、まあ。得点は、一般臨床は9割弱、必修は9割強という結果でした。難易度としてはむちゃくちゃ易化したと思うので、そんなに良くはないと思うけれど、とりあえず合格ということにはなりそう。ショボい問題でミスをしたのはよくないのでそれなりに復習をすべきではあるが、概ね大丈夫でしょう。
これからの国試に問われること
予測にすぎないけれど、106と107の流れは明らかな知識レベルの低下と「即時の対応の判断」の問題の増加が特徴的だと思う。まず後者、「即時の対応」については、各予備校においてもかなり言われてきたことであって、特段目新しさはなかった。しかしこれが必修においてかなりシビアなところまで出題されたので、ヒヤヒヤした人は少なくなさそうである。冷静に考えれば妥当な選択を選ぶこともできるが、試験中という状況ではしばしばオーバートリアージ気味になってしまう。もちろん過小評価よりは人命にとって悪くないんだけれど、考えもなしにオーバートリートを繰り返せば、限りある医療資源はすぐに底が尽きる。そういう観点を学生に問うのは国家試験としては過剰な気もするけれど、現代の医療が抱える問題への処方箋としては、結構妥当なのだと思う。まあ、よく勉強してれば純然たる判断(すなわち、医療資源がどうとか、そういう非医学的な状況への対象)を問うているものはそこまで多くなくて、医学的にカタがつくものも多いんだけど。たぶん現場の人としては、「それはどっちでもいいんだけど、こっちの方がベターかなー」くらいの判断なんだろうが、一応、教科書には根拠とともに判断材料が書いてある。医学的にも、現場的にも妥当な、しかし単なる知識ではない問題、としてよく練られてはいたと思う。特に必修の、トロップTを聞く問題、妊娠の経過観察を聞く問題は、そういうテイストを感じた。
一方で知識問題の出題は相当に減少したようである(予備校の分析を待つべきだが)。マークシートというテストの性質もあるが、消去法などの方法が使えるので純然たる知識を問うこと自体が無理筋だろう。判断問題は、「経過観察とすべき」なのか「入院して精査すべき」なのかは、消去法によって選べないし、むしろダミー選択肢を適切に除外できる能力も評価し得る。知識が臨床で使えないはずはないし、レアな疾患ほど試験などのペーパーでしかお目にかかれないわけで意義はあるんだが、その比重がかなり減少の傾向にはあるようである。これはあまり良いとは思えない。理由は単純に、勉強を頑張った人が評価されないから。暗記に優れた人は少なくない割合で医学部にいるけれど、そうでない人も試験前には頑張っている。リピドーシスなんて試験前くらいにしか覚えてらんないけれど、覚えてくる(ぼくは覚えてなかった)。そういう努力はある程度評価されても良いと思うし、努力のしがいがある試験であることは望ましいことだとも思う。まあ、努力の評価が試験の本分ではないという判断なのだろうが。
対策など
対策はしにくくなったようにも思う。一方で、対策の必要性自体が低下したとも思う。
まず、対策のしにくさとは、例えば必修がこれまで新問中心だったのに輪をかけて、その場の判断を聞いてくる。もちろんようく勉強すればわかるんだが、必修のQBを解く事自体はほとんど対策にならない。もちろん、他人が取るようなプール問題を潰しておく意義はあるが、その意義も限定的だろう。必修のみならず一般臨床(特に臨床)でもこの傾向が見られ、QBが即時的に国試の対策になる割合は、減少しているとみてよい。無論、教科書の理解をアウトプットする場としては必要であり、QBは通過すべき関門ではあるが、それだけでは意外と点を落とすことになるだろう。
一方で、上で対策の必要性の低下と言ったが、それは実習の経験がそのままテストで問われるケースが増えたということである。実習で見てさえいれば解けた、というものも散見され(特に必修の臨床)、机上の勉強のみならず、実習を重要視せよという意図は感じられる。その意味で、机の前で勉強する時間を減らす一方で、ベッドサイドでの勉強が重要になってくる。
所感
卒業時OSCEの必須化を睨んだ国家試験だと言えそうである。ただし、実習重視の教育というのは一見すると正しそうだし、社会的にも容認されやすいが、一方で大学によってそれをどこまで提供できるかということに差がつく可能性もある。知識と技能の平準化が国家試験の本来的な目的だが、教育を受ける場の平準化は難しく、試験としてアウトカムだけを評価するというのは十分に整合的なのかわからない。
ただまあ、国家試験が6年間の集大成となる、というお題目には合致するものになってきているようには感じる。最早、国家試験は6年生で対策をするものではなく、4年生頃から積み上げるべきものとなっているのであろう。
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